エストネーションを形作る人たち
Director Interview
エストネーション六本木ヒルズ店の20周年を記念し、これまでの20年そして未来をともに作る人たちが集まり、エストネーションのあたらしいスタイルを提案するコンテンツ「Future oriented People」。これまでスタッフやゆかりのデザイナー、お客様と共に作り上げてきました。その最終回となる今回は、ディレクターの2人にフォーカスします。ブランドオリジナルのアパレルはもちろん、インポートのセレクトやライフスタイルプロダクトに至るまで、六本木ヒルズ店でお客様が見て触れる商品の製作、選定を監修するのがディレクターです。店舗で直接の接点はなくても、その想いや考えは商品を通して店舗に反映されているのです。そんなエストネーションブランドの核を形作る2人に、クリエーションに対するこだわりや、内に秘めるエストネーションの未来への想いについて話を聞きました。
鷲頭 直樹
ESTNATION MENS DIRECTOR
エストネーションのメンズディレクター。大手セレクトショップにて長年バイヤーとして活躍したのち、2019年から現職。ストリート、アメカジからラグジュアリーまで幅広いジャンルを横断する審美眼を持つ。
藤井 かんな
ESTNATION WOMENS DIRECTOR
エストネーションのウィメンズディレクター。セレクトショップのプレスやバイヤーを経て現職。オリジナルやセレクト、協業ブランドに至るまで、数多くのプロジェクトを手がける。
時代の潮流を 取り入れていく
エストネーションを形作るディレクターとして、どんな想いを持って取り組んでいるのでしょうか
鷲頭 直樹 (以下W):ディレクターという仕事は、基本的にはシーズン前にテーマや全体のディレクションを発信するのがメイン。あとは海外に行くバイヤーに同行して情報を収集すること。それに加えていろいろなところに出向いて、さまざまな情報をキャッチしそれをどう洋服に落とし込むのかを考える作業をしていきます。現代は社会の潮流と洋服が非常にリンクしているように感じていているので、リサーチの時点で洋服だけを見ていてもしょうがない。ファッションアラウンドの色々なことにアンテナを張って、社会潮流とマッチした洋服を打ち出していくのが使命だと思っています。
藤井 かんな(以下F):シーズンのコンセプトを考え始めるのは、ローンチから逆算して大体一年前くらいから。これから時代がどのように移り変わっていくのか、今自分が興味のあることはどんなことか、ワクワクしたことはなんなのか。そんな感覚的な部分も含めて考えていきます。ここが最も大切でそもそも自分がワクワクできなかったら、お客様には絶対に伝わらないですから。
そういった時代や社会の潮流を感じ取っていく上で、意識していることはありますか
W:同業の方だけではなくて、異業種の方たちと積極的に関わることです。そうすることで自分じゃ絶対に行かないような場所にたどり着くことができるし、今までの価値感とは違うものを見つけることができる。例えばパリにいっても社会潮流が変わっていることはなかなか感じにくいことがあります。洋服は当たり前のように変わっていても、街並みは変わらない。でも逆にアメリカに行くと、最新のライフスタイルが見える。それがいいか悪いかは別として、海外出張でも今までは買い付けが中心でしたが、もっとそういう意味で洋服以外のいろいろな側面を見るという方向性にシフトチェンジしましたね。いわゆる展示会に行ってショーを見てという今までのような動きだけでは、これから先のエストネーションの世界観を作り出すことが難しいと感じているんです。
現代のファッションにおいて感じている事はありますか
F:そうですね。世界的にもファッションのムードや価値観が変わってきていることを感じています。華美な装飾がついていたりするものではなく、シンプルでも作っているデザイナーの想いが強く入っているものがいま選ばれている。それは間違いなく人々のライフスタイルの変化によるもの。ファッションは時代を映す鏡とよく言いますが、いま色々な変化が起こっていてそれがそれぞれに込められていると思います。
メンズ、ウィメンズそれぞれのシーズンのムードを決める時には、お互いにコミュニケーションをとるのでしょうか
W:一度もないですね(笑)。決まったことを報告するくらいです。自分の場合は具体的にということより、みんなに考えてもらうようなディレクションの内容が多くて。何年代の〇〇みたいに明確化させるようなこともやってみましたが、なかなかうまく伝わりませんでした。もっとシンプルなディレクションでチームのみんなに考えてもらうような方がいいなと思ったんです。
F:メンズとは違った角度で物事を見ていても、共通項があることもある。鷲頭さんが発する言葉だったり、とても本質を捉えていることを言われたりとかするので。そういうところで刺激を受けたりとか、自分の中で考えていたことに対しての答え合わせになっていたりすることもありますね。
W:物事を決めていくスピードも同じように大切だと思います。結局長い時間をかけて考えても、元の考えに戻ってくる時ってあるじゃないですか。自分はもっとシンプルでスピード感がないといけないなと思っているんです。
F:例えば今シーズンの24SSだと、擦り合わせをしていたわけではないですが、それぞれ違った角度の感じ方の中で、シーズンテーマは同じだったり。それぞれ踏んでいくプロセスは違うけれど、確実に同じ方向を向いていることを実感しました。
選ばれるショップで あり続けるために
時代潮流、普段感じているものを落とし込んでいくのと同時に、エストネーションならではの要素を落とし込むことも重要だと思います。そんなエストネーションならではの要素とは改めてどんなことだと思いますか?
W:エストネーションの強みは、艶感や大人の色気です。とても感覚的で毎シーズン形が変わっていく要素でもあるので、しっかりと向き合っている部分ですね。メンズは背景やカルチャーの要素が重要だと思うので、僕たちは当然知っていなければなりませんが、果たしてそれはお客様にとってそれを知ることが嬉しいことなのかと考えた時に、違うのではないかと思い始めています。価値観の押し付けになってしまっては意味がないですから。
確かに、大人の色気と一口に言っても、時代感によって異なりますよね
W:そうなんですよ。そういった感覚的な部分は時代感も大きく関係してくるんです。なので、そういった要素は若いスタッフにも確認しています。
そのスピード感によってお客様に時代のムードを洋服を通して届けているんですね
W:そうですね。結局今の色々な情報は、僕らと同じタイミングでお客様もキャッチできるじゃないですか。流れがどんどん早くなっている中で、接客はもちろん、スピード感も私たちが提供するサービスの一つになるのではないかなと考えているんです。
F:ウィメンズも色気は同じく大切なポイントです。エストネーションは大人のお客様が一番コアな部分であるからこそ、本物であることやクオリティが求められている。よりコロナ禍を経て、まず自分たちがいいと思うか、自分たちがワクワクするか、そう言ったシンプルな答えに辿り着いた気がします。
世代を超えた幅広いお客様がお越しになるエストネーション六本木ヒルズ店。他の店舗とは違う物選びの視点はありますか
F:親子2世代でお越しになるお客様もいらっしゃるので、変わらずタイムレスで良いものはもちろん選びますし、半歩先、一歩先をいくようなフレッシュな感覚のあるアイテムもセレクトします。どちらも大切なポイントとして考えているんです。六本木ヒルズ店の広大なスケールの中だからこそ、エストネーションという美意識を通して、そうしたアイテムのバラエティ性は大切にしていますね。その中でも自分たちがこういうふうに時代を切り取っているんだ、変わりゆく時代の中で、何を新鮮に感じているのかをお客様に感じ取っていただく場所でありたいなと思っています。
これから先の10年、20年の、エストネーション六本木ヒルズ店がお客様にとって魅力的な場所であり続けるために考えている事はありますか
W:20年後も残り続けていくには、世代交代というか、常に血液じゃないですけど、循環していないと腐ってしまう。情熱を持った若い世代のスタッフとともに、常に時代を捉えていかなければなりません。 スピード感を持って本当に良い物をお客様に伝える土壌を作ることが、これから先のエストネーションにとって最も大切なことだと思っているんです。
F:「Future oriented People」のコンテンツで世代を超えて残っていくための考え方をさまざまなスタッフのフィルターを通してお伝えしてきました。エストネーションとして次世代のスタッフがどんどん輝いていくような、そういうチームになっていくということが今後もっとも重要です。デザインチーム、バイヤー、店舗のスタッフ、PR、プロモーション。お客様を楽しませる、ワクワクさせたいという願いを等しくみんなが持っていること。そんなチーム感はこれからも大切に、それぞれの世代が個性を発揮することでエストネーションの20年後はすごくいいチームでお客様にもワクワクしてもらえるようなお店であり続けられると信じています。
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