
渡辺真史との対話

ベドウィン & ザ ハートブレイカーズ
ジャケット & パンツ
あなたの考える「育ちのいい不良とは?」
誰かに右にならえではなく、僕はこれが欲しい、
これが着たいという「自分」という主語がある人。
クリエイティブに自由な発想で自分らしい表現をしていこうよ、みたいな。
「育ちがいい」ってことはいいものに巡り会える機会が多いことだと思う。
だから物への造詣が深くなってくる。
それを自分の価値観と考えに従って取り入れられる人。
あなたのバックボーンは?
3つ歳上の姉。
高校生の頃はお金がないから服なんて買えないから、 彼女のタンスから服を物色して盗み着して街に出ていた。
その中にはグッドイナフやSTUSSYといったストリートの服もあれば、
ヴィヴィアン・ウエストウッドやコムデギャルソンもあった。
不思議な形のアクセサリーがあると思ったらゴローズで。
原宿や渋谷のショップや、 ナイトクラブに連れて行ってくれたのも姉。
東京でとびきり自由な校風で知られる付属校に通っていた彼女の周りには、 面白い大人や仲間がたくさんいた。
普通なら、雑誌やショップスタッフから学ぶことを身近な家族が教えてくれた。
姉に街のカルチャーを叩き込まれたというか、教えてもらった。
ファッションの原体験は?
リーバイス501の赤耳。多分「66」。
中学生のとき、姉から「これいいものだから買いな!」って。
その価値もわからないまま、貯めたお年玉で。
「ほら、ここに赤いステッチ入ってるでしょ」とか言われて。
いい服やその着方を誰よりも先に教えてもらった記憶がある。
「MEN'S CLUB」や「POPEYE」などの雑誌を開くと、
ああ、俺が着ている服は合ってたんだって。
SOCIETY REBEL「育ちのいい不良」
どんな人を思い浮かべる?
すべてのカウンターカルチャーに生きた人たち。
今あるものに対して問いかけをして、何かを表現をしていく人。

ベドウィン&ザ ハートブレイカーズ
渡辺真史と
エストネーションメンズディレクター
鷲頭直樹の対話
鷲頭:〈 SOICETY REBEL 「育ちのいい不良」〉というコレクションを企画して、まず渡辺さんの顔が頭に浮かびました。王道のボタンダウンシャツー枚の姿も、どこか他の人と違う個性と雰囲気があって。東京のストリートファッションシーンの中心にもいる方ですし。
渡辺:ただのおっちゃんですよ(笑)。鷲頭さんが展示会に来て「いっしょに何か作りたいです」と言ってくれて。
鷲頭:そこでひらめいたのがスーツ。そこから渡辺さんのアイデアで。
渡辺:若い頃スーツは着たくないアイテムだったんです。ラッシュアワーに満員電車で揺られて、好きでもない上司に怒鳴られている大人が着ているって勝手なイメージで(笑)。俺はスーツを着る仕事には絶対就きたくないって。
鷲頭:(笑)。
渡辺:でもファッションの仕事を始めて、大人になるにつれてスーツって格好いいものだなって思うこともあって。
鷲頭:ベドウィンでもスーツを作っていますね。
渡辺:自分が着たいスーツがないから作ってしまおうと。それから、ベドウィンでは何かしらジャケットとパンツのセットアップを作っています。そんななか、鷲頭さんから「スーツが作りたい」と言われて。エストネーションの雰囲気とベドウィンらしさを掛け合わせたスーツってどんなものだろうと思案して。そこで、今の気分でもある「ワーク」をテーマにしました。最近街でよく見る、カーハートのカバーオールを着ている男の子たちがヒント。'90年代に自分が見た、ヒップホップのMVとかでセットアップのワークウェアをカッコよく着る感じ。ちょっと不良なギャングスタイルなラッパーたちのイメージでスーツを作ろうと思って。
鷲頭:最初はボロボロのスーツを作りたかったんですよね。
渡辺:50年間くらいはき続けたようなボロボロのペインターパンツが自宅にあって。そういうイメージでスーツが作れたらいいなと。そこから、新品をボロボロにしていくストーリーも加えたくなって。結果、ワークウェアで使われそうな生のコットンダックキャンバス地にしました。最初は着づらいけれど、自分の身体に馴染む「生デニム」みたいな感じ。スーツに「生」って発想はないから。毎日着て、どんどん味が出ていく。柔らかい素材のものはあるけれど、新品のときに着づらい生地を使ったスーツってないよなって。そんな天邪鬼な視点に「育ちのいい不良」感を出したかったし、個性を見出したかった。
鷲頭:自分も経年変化って好きで。デニム、レザーライダース、エンシニアブーツとか、そういう世代じゃないですか。'80年代 '90年代の渋カジで育った世代。ところで、このスーツはどのように着てもらいたいですか?
渡辺:スーツ着ているけれど地べたに座れるぞ。スーツ着ているけれどスケートボード乗れるぞ。スーツ着ていても膝とかに穴開いても別に気にしねーぞ、みたいな。きれいに着てもいいし、ボウタイ&白シャツを合わせてもいい。ボロボロのTシャツに合わせてもいい。自由な着方で。スーツが嫌いな人、スーツにまだ袖を通してないユースにも着てもらいたい。そして、これまでエストネーションでスーツをあつらえていた方にも。エストネーションで扱ってきたスーツとは、まったく異なる雰囲気と価値観がありますから。
