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ラグジュアリーの本質を追及し、 品質にこだわったものづくりによるタイムレスでクリーンなスタイルを提案するエストネーション。ただ、そのラグジュアリーの定義とはいったいなんなのか。「豪華な」、「贅沢な」という意味だけで表現することが果たして本質なのか。フリープランナーの種市暁さんを水先案内人とし、それぞれが思い描くラグジュアリーを探す旅に出ます。

LUXURY OF ESTNATION

Issue.1

鷲頭 直樹

旧知の仲が語る月日の
うつろい

新連載となる「LUXURY OF ESTNATION」。自分自身が今考えるラグジュアリーについて、ジャンルレスに第一線で活躍する人と対談を行っていきます。初回は企画の発起人であるESTNATIONのメンズディレクターを務める鷲頭直樹と種市暁さんによる対談。20代からという旧知の2人が、さまざまな経験を経て考えるラグジュアリーを語ってもらいました。

PROFILE

鷲頭 直樹

ESTNATION Mens Director

BEAUTY&YOUTHやUNITED ARROWS&SONSのバイヤーとして活躍したのち、2019年より ESTNATIONのメンズディレクターに就任。ラグジュアリーウェアだけでなく、アメカジなどの造詣が深く、ファッションへ精通している。

種市 暁

Planner

長年BEAMSにて、様々なプロジェクトを手がけたのち、数年前に独立。現在は企業やブランド、セレクトショップなどのコンサルティングやディレクションに携わり、自身もモデルとしてより幅広い分野で精力的に活動中。

LUXURY OF ESTNATION ISSUE 1

INTERVIEW

ファッションが
熱くなっていた時期に
ちょうどいい先輩に出会った

連載の第一弾。 ESTNATIONのメンズディレクターを務める鷲頭さんと企画の水先案内人である種市さんに今回の企画の意図も合わせて伺っていけたらと思いますが、まずお二人の出会いはどういった経緯だったんでしょうか?

種市

もともと、僕はBEAMSで年齢が一つ下の鷲頭くんがUNITED ARROWSに入ってた。そこで僕を可愛がってくれていた先輩と、鷲頭くんの先輩が幼なじみだったんですよ。それでその先輩たちが仲良しで、後輩たちを連れて飲みとかクラブとか、合コンに連れて行ってくれていた時に出会った感じですね。

鷲頭

いや違いますよ(笑)。僕はBEAMSの原宿店に結構買い物に行ってたんですよ。

種市

俺、原宿店にはいなかったけど?

鷲頭

そうなんですけど、WILD THINGSのデナリジャケットが欲しくて、原宿店になかったから種市さんがいる渋谷店に取り置きしてもらっていたんですよ。そうしたら種市さんから電話かかってきて、取りに行くってことで会ったのが先なんです。

種市

あ、それが先なんだ(笑)。

鷲頭

そうしたら、先輩の共通の繋がりもあったっていう流れですね。

種市

そこから意気投合して、クラブとかに行っていたのか。鷲頭くんもサーフィンやっていたから、一緒に行ってたし。そうしているうちに僕もBEAMSでいろんなお店のディレクターとかディヴィジョンに行ったりしていた。
鷲頭くんもUNITED ARROWSのドレス部門に入ってから、いろいろな経験を経て ESTNATION。経歴はそれぞれだけど、年齢も近いこともあって付き合いは長くなったね。ファッションの感じも根本的に違うんだけど、なんか波長が合うと思っている。

鷲頭

いや、それでいうと僕は最初は種市さんのマネをしてましたよ。これまでそんなこと言ったことないですけど、僕のファッションアイコンでした(笑)。一緒に買い物に連れて行ってもらったりとか、ファッションが熱くなっていた時期にちょうどいい先輩に出会ったという感じ。僕の中では兄貴的な存在ですよ。

種市

そう思ってくれてたんだ(笑)。僕はずっと東京で育って高校は私服だったので、ある程度いろんな服を着て、ファッション業界に入ってデザイナーズにも面白いものがあるなって知ったんです。逆に鷲頭くんは新潟から上京して、それぐらいの年齢の時にgoro'sを買ったりしてたよね。僕の周りにもそういう人がいたんですけど、そこまでカルチャーの方にのめりこまなかった。もうちょっとサラッとしていたかったんだよね。

鷲頭

僕はカルチャー側にどっぷりでしたね(笑)。

種市

でも、鷲頭くんが前職でドレス部門にいた時にインナーのPRADAのベストの使い方がいいなとか思ったりしてたよ。ただ、本当に好きなものに関してはストリートカジュアルだから、その当時のBEAMSがそっちのジャンルで面白いことやっていたのもあって、お互い無い物ねだりだったのかな。

鷲頭

ドレス部門というのはたまたまだったんですよ。当時、スーツ売り場しか募集してなかったんでわからぬまま飛び込んだんです。

種市

当時、スーツは今では信じられないぐらいみんな着てて、オールデンを履いてたよね。鷲頭くんもショートカットで顔もツルツルのイケメンだった。社内のモデルとかもやっていて、BEAMSにないものを持っていたよね。そんなこんなでESTNATIONに入って、僕もフリーになって色々な仕事に携わっていたので、こうやって縁あってまた関わってます。

鷲頭くんが
ESTNATIONのディレクターに
なったことが面白いと思った

その縁あって対談連載が始まることになりました。数あるセレクトショップの中でも、ESTNATIONに対してはどういうイメージをお持ちでしたか?

種市

出来た時は六本木ヒルズのイメージがすごくて、置いてあるものがすごいなって思った。ただ、一方でライバル心もあって、なんかギラギラしてるのに負けられないという気持ちもありましたね。そこから時を経て、某会社の案件の手伝いで、改めてESTNATIONを見た時に同じことをやっても敵わないと思っていました。

鷲頭

最初のイメージはコーナー展開が多かったので、百貨店のようだなと思っていました。正直そこまで興味はなかったし、まさか働くとは想像もしてなかった。あと僕も六本木ヒルズのイメージが強く、一回入ると圧倒されるぐらい、自分とは離れている存在でした。

種市

それでいうと鷲頭くん、今日はまともな服装してますけど、普段は古着のDickies。そういうスケーターっぽいパンツに癖のある友人のブランドだったり、ストリートカルチャーを感じるものを着ているもんね(笑)。

鷲頭

そうなんですよね。面倒臭いんです(笑)。

種市

昔から男っぽいのが好きだよね。

鷲頭

根本はアメリカの不良カルチャーですね。そこからスーツ売り場でドレスの勉強をさせてもらって、デザイナーズというのも見ました。そのミックス感というのを、前職で教えてもらいましたね。ただ、やはりDickiesがあればそれでいいぐらいには思ってますよ。

種市

だからこそ、ESTNATIONのメンズディレクターになった時に面白いなと思った。僕は鷲頭くんが好きなカルチャー周りの友人が結構いて、地元にも不良がたくさんいた。加えて、兄貴もそうだったから、逆に僕は興味なかった。そういうのもあって、サラッとしてる方がオシャレだなと思ってる。
ESTNATIONに対しても、僕だったらギラっとしてるモテ服に需要があるなら、そういうディレクションもするし、スタイリングもする。そういう意味では僕とは真逆な部分があるよね。

鷲頭

やっぱり、東京のかっこいい人ってシンプルなんですよね。だから、東京の不良も田舎とはベースが違う。そういうのにもすごく憧れを抱いてました。派手さはないけど、スタイリッシュ。アメリカものが好きと言いながら、実際は東京なんでしょうね。初めてアメリカに行った時も、本当にかっこいい人がいなくて。

種市

それあるあるだよね。僕らの20代前半の時だとアメカジでRED WING履いてみたいなと思って、行ってみたら全然いない。RED WING、Carharttもあっちだと工事現場の作業服だよっていう。

鷲頭

そうそう。1人もそんな人いないんですよね。

種市

日本人が着物を全然着てないのと一緒だよね。

鷲頭

今でこそ海外のデザイナーさんが日本の90年代をネタにしてたりしてる。その逆輸入みたいな感じになっているのも面白い。

個性が生きるから
似合うというのは、
一つのラグジュアリー

ファッションや好きなカルチャーが真逆にあるお二人ですが、ご自身はラグジュアリーをどのように捉えてますか?

鷲頭

ESTNATIONに入ってからは敏感になりました。初めは言葉通り、贅沢とかで自分には無縁だと思ってました。でも、この会社に入って、言葉の捉え方は人それぞれだなという考え方になりましたね。だから、自分の仕事としてもキラキラとか、贅沢とか豪華とかだけじゃなく、そこに付加価値をつけられるかどうかが大事。それができれば自分がディレクターに就任した意味があるのかなと思っています。

種市

昔は単に華美なもの、高いものを身に付けることがラグジュアリーという認識でした。でも、BEAMSにいながら俳優さんの仕事の手伝いをしたり、そういう場でいろいろな人の姿を見たり、遊び仲間だったデザイナーのもの作りに真摯な姿勢とかを見てきたり、いろいろなことを体験して自分の本質が変わったように思います。
ブランドものでもブランドものじゃなくても、自分に合ったものを身に付けて生活して心が豊かになれる事が真のラグジュアリーと言えるのかなと思うようになりました。これは経験と年月を経て、たどり着いた感じ。

鷲頭

決して、若い時からそうしろっていうことではないけど、色々な買い物をしてみてほしいですよね。

種市

そうだね。僕も20代のころ、無理してROLEXの古いGMTを20万ぐらいで買った時はわーってなった。ただこれつけてるけど、俺の生活費いくらよっていう(笑)。

鷲頭

すごくわかります(笑)

種市

そのヴィンテージを大切にするために手を洗うときは外したり、サーフィンの時もダイバーズウォッチなはずなのに外したり、これはかっこいいのかなって立ち返った。それでしばらく時計をしなかったりしたけど、そういうのも経て、自分に不釣り合いなものを付けるのってかっこよくないのかなと思った。

鷲頭

ただそれもつけてみないとわからないですよね。

種市

そう。だから自分にとってラグジュアリーな時計としてたどり着いたのが、Apple WatchのUltra。これ何がいいかって、海の中に潜って行っても平気なのと、どこでも電話ができるんです。僕にとって豊かなことって好きな時にサーフィンや雪山に行けることなんですよ。
それはお金以上に大切なことなんで、仮に海でサーフボードの上でもこれがあれば電話できるんです。それでいて、充電も長持ちするし、タフ。あとは自分の体調に異変が起きた時に、脈拍を測って緊急の電話もしてくれるんです。だから、僕にとってどんな高価な時計よりも必要なものになっている。

鷲頭

僕も身の丈という言葉を最近考えますね。無理して買ってた時期って相当あったと思うんですけど、そういったものって意外と手元に残っていない。車とかもそうですけど、生活レベルとかあるから維持できない。
こういうこと言う時点で歳を取ったなと思うんですけど、人に合った生活とか、ものってカッコよく見えるんですよね。それが例え高価じゃなくても。その人だからとか、その人の個性が生きるから似合うというのは、1つのラグジュアリーだと最近感じる。

種市

個性ね。価格のことじゃなくて、自分らしさがあるかないか。自分がいいと思うものを信じることが大事。

鷲頭

そういう意味でもESTNATIONでは、見た目はそのままなんだけど、裏を返すとそういう意味なんだっていうもう一歩深みを持たせることをやり続けたい。そこはネガティブではなく、ポジティブに捉えてラグジュアリーというものを真剣に考えてます。まだ答えは出ていないので永遠のテーマなのかもしれませんが...。
ラグジュアリーという言葉がないとESTNATIONも成立しないので、それぐらい重要なキーワードです。

先ほど鷲頭さんが歳を取ったとおっしゃっていましたが、そういういった年齢による変化もお互いに感じますか?

鷲頭

種市さんはどうでしょうかね。正直あまり変わってないですよ。昔からいいものも安いものもチープシックっていうんですかね。そういうバランス感覚を勉強させてもらいました。押し付けじゃないところがいい。今もよく会ってる方なので、昔から考えても変わらない。

種市

そうだね。自然かも。極端に変わったところはない。あと良くも悪くも鷲頭くんは頑固ですね。あと、人に興味ないんですよね(笑)

鷲頭

いやいや(笑)

種市

頑固なんだけど、なんか受け入れてもらえるの上手い。もう一回言いますけど、この頑固さと服の感じでESTNATIONのディレクターになるとは思わなかった。頑固さと柔軟なバランスがいまだに掴めてないですね。

鷲頭

頑固じゃないですよ、割と柔軟な方だと思うんですけどね。

種市

いやいや好きなものとかはしっかりしてるからさ。

鷲頭

そこの部分は確かに。でも、結局のところそんなに変わらないと思いますよ。

ラグジュアリーの本質を
捉えられる対談が続いてくれるのを
楽しみにしています

旧知の仲ならではの軽快な掛け合い。まだまだ聞いていたかったのですが、最後にこの企画を始動するにあたって、鷲頭さんは種市さんにどのようなことを期待していますか?

鷲頭

皆さんが想像するラグジュアリーと違う観点で話してくれるから楽しい対談連載になると思っています。なので、今まで想像するような目線とは違うESTNATIONのイメージがつけられたらいいですね。わかりやすいラグジュアリーももちろん大事だけど、この連載をきっかけに一回考え直すことをしてくれたら、より豊かになっていくと思うんです。それがサスティナブルというか、いいものを長く使うことになる。そういった本質を捉えられる対談が続いていくのを期待しています。

種市

僕は鷲頭くんと今日話してみて、振り切っていいんだなって思いました。正直本編には載せられない話もたくさんしましたが、特に鷲頭くんは会社のことに全然触れてなかったもんね(笑)。僕がせっかくESTNATIONのハラダマニアのセットアップを着てきたのに、何も振ってこないし。

鷲頭

ここで改めて説明する必要ないじゃないですか(笑)。だっていいものに決まっているんだから。ここでは商品がどうですってことより、ラグジュアリーの考えの方を重要視したいんです。

種市

なるほどね。僕的には変な話ですけど、この連載は異質な方がいいと思ってます。そうした方が、ESTNATIONのスパイスじゃないですけど、これまで来ていなかったお客さんが何の対談?って立ち止まる。そして、本編を見てみたら、そのぐらいラフな感じでお店に行っていいんだなっていう流れが生まれたらいいですよね。そのぐらいフランクに紹介していくけど、ESTNATIONのラグジュアリーという部分は芯がしっかりあればブレないだろうし。

鷲頭

想像通りは楽しくないんで超えてきてほしいです。種市さんからしても自分がここにいること自体想像してなかったと思うんで(笑)。

種市

確かにそうだね(笑)。

鷲頭

今のお客さんに楽しんでもらえることを願いつつも、新しい人たちにも興味を持ってもらえれば嬉しいですね。

Column

ここでは自身が思う“今”のラグジュアリーにまつわるものを紹介してもらいます。果たして、そのものにはどういった思い入れがあり、どのようにラグジュアリーを表現するのか。そんな逸品たちをお楽しみください。

SMITHのスノーゴーグル4DMAG

ここ数年スノーサーフにハマっていて、コンディションが変わりやすい雪山を安全に楽しむためにゴーグルは大切。このSIMITHのモデルは世界最高峰のレンズを使用していて、広く鮮明な視界を提供してくれます。ここで渋って安いものを買うと視界が悪くなって怪我に繋がる可能性がある。あと僕は欲張りなので機能に加えてデザインも良いモノだと気分も上がります。そんな自分が気持ちよく楽しむために必要なものに関して投資をするのも、ある意味ラグジュアリーですね

アグリ難波米

福島に行った際にたまたまローカルの方々と仲良くなり、水田環境特A認定を受けるような最高の環境で作られているお米の存在を知りました。そして、このお米を作っている難波くんはサーフィンとスノーボードが上手いだけあり、パッケージもダンボールにサーフスタイルを描くアーティストのTAOさんが描いています。味はもちろんですが、置いていても絵になるお米なんて最高ですよね。これも現地に出向いて、スノーボードをやって人と繋がった結果。その人のことを思い出しながら食べるお米の味は格別で心が豊かになるんですよ。

左:Undefined Things X Kikko
右:M&M × MASSES

コロナの自粛期間中に、たまたまInstagramで多肉植物のアガベを知り、一気にハマりました。その流れで植木鉢にも興味を持つようになり、好きなデザインのものを集めています。植物とのバランスを考えて、組み合わせるのはファッション感覚で楽しめますね。オーダーで棚も作ってもらったんですが、スペースも限られているのでそんなに数が増やせないんですけど、自分が豊かな気持ちになれるというのが園芸。今は生活の半分以上は、アガベのこと考えています

ターコイズ

ターコイズとシルバーの組み合わせがもともと好きで、ニューメキシコに行った時に現地の工場を見せてもらったことがあるんです。その時に、今まで名前とかブランドで選んでいた自分が恥ずかしくなってしまって、それからは見てよかったものをつけようという考え方に変わりました。結果的にいまだに手元に残っているものはターコイズ。ほかは全部手放したりしていて、自分にとってはこれからも密接なものなんだなと思っています

ESTNATION Men's Director

NAOKI WASHIZU

Planner

AKIRA TANEICHI

Photographer

YUMA YOSHITSUGU

Writer

KEI MATSUO (TEENY RANCH)