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ラグジュアリーの本質を追及し、 品質にこだわったものづくりによるタイムレスでクリーンなスタイルを提案する ESTNATION。ただ、そのラグジュアリーの定義とはいったいなんなのか。「豪華な」、「贅沢な」という意味だけで表現することが果たして本質なのか。フリープランナーの種市暁さんを水先案内人とし、それぞれが思い描くラグジュアリーを探す旅に出ます。

ARCHIVE

ISSUE 1 鷲頭 直樹
LUXURY OF ESTNATION

Issue.2

靍岡秀明

老舗の3代目が考えるラグジュアリー

ジャンルレスに第一線で活躍する人が、今思うラグジュアリーについて対談を行う「LUXURY OF ESTNATION」。今回はサボテン・多肉植物専門店、鶴仙園の3代目である靍岡秀明さんが登場します。ファッションとは違う、植物業界に身を置く靍岡さんはどのようにラグジュアリーを捉えているのか。もともとサーフィン仲間だという2人が赤裸々に語ってくれました。

PROFILE

靍岡秀明

創立90年を誇る鶴仙園の3代目。サボテンの強刺類から有星類、牡丹類、多肉植物ではパキポディウム、アデニューム、アガベなど各種優良株を取り揃えているほか、自他共に認めるサーフィン好きでサーフショップのsurf&sk8 SABO10も運営している。

LUXURY OF ESTNATION ISSUE 2

INTERVIEW

息子の友達から
この人かっこいいって見せてもらったら
タネだった

第2回となる「LUXURY OF ESTNATION」。今回は植物を取り扱う靍岡さんにラグジュアリーのお話を伺っていきますが、種市さんとの関係は?

種市

実は30年ぐらい前に出会っていて、大学で同じ学部だったんだよね。その時に出会って意気投合したから、言わば大学時代から遊んでいた友達。その当時からツルは、お父さんが鶴仙園というサボテン屋をやっていて、手伝っていた流れもあって卒業して継いだ。その後はしばらく僕がセレクトショップ務めだったので平日休みになってしまったけど、ツルは週末休みだったから、頻繁に会うという感じではなかったかな。

靍岡

そんなこともないよ。

種市

あれ?よく同級生と週末に海行ってなかったっけ?

靍岡

周りの友達が週末休みだったから、それに合わせてただけだよ。そこからは海ですれ違うぐらいの感じだったね。

種市

そうだね。たまに会うんだけど、会ったら戻るタイプの友達。

靍岡

何年経っても関係性は変わらない。

種市

ただ僕としては、その会ってない時にほかから聞くようになった。サボテンや多肉植物のブームもあって鶴仙園の名前をよく耳にしてたんだよね。その時にそれってツルの所じゃないかなってなった(笑)。

靍岡

その時、あえて知らないって突っぱねたよね(笑)。

種市

そう。実は僕も学生時代にサーフィンの帰りに千葉のビニールハウスで水やりの手伝いをやっていたんです。ただ、そこが50℃近いような蒸し風呂みたいな環境で...。

靍岡

こっからここまでやっといてみたいなね。

種市

その水やりもだけど、鉢の植え替えとかもやってたから、もう見るのも嫌になった(笑)。

靍岡さんは種市さんの印象はいかがでしたか?

靍岡

今と変わらないですよ。もともと僕らの中でもタネは服が好きで、しょっちゅう買っていた。それでしょっちゅうその服を買わされました(笑)。

種市

でもツルも好きだったじゃん。あと彼はハイエースを改造したり、車もすごかった。ジムニーとかを皆んなで砂浜で走らせたりしていたよね。

靍岡

あの時はまだ走らせてよかったから。何回もひっくり返りそうになってたけど(笑)。

種市

とにかくいろいろなことを一緒に経験しましたね。だから息が合うというか。当時の大学というと生徒数も多いから、ほんと出会いはたまたまだった。

靍岡

クラスは別だったもんね。ただ、東京から通うってのが一緒だった。

種市

そうだそうだ。それで電車の行き帰りで仲良くなったんだ。

靍岡

その時によく洋服を見に渋谷とか上野とか色々なところにも行ってましたね。

種市

付き合いは長くなったけど、社会人なってからはそこまで頻繁に会ってるわけじゃないんだけどね。

靍岡

ただ、それでも大学時代の友達と考えると一番会ってるかも。あと一回、息子の相談もさせてもらった。服飾業界ってどんな感じなのかを教えてもらいたくて。

種市

そうそう。息子が洋服が大好きってことで相談を受けた。その時に3Kで、どうしようもないよって言った。

鷲頭

間違いないですね(笑)。

種市

服飾業界も大変だけど、ツルがやっている伝統と格式があるところだからそっちの方がいいんじゃないって話した。そんなことを言ってたら、ツルがテレビに出てきてびっくりみたいなね。

靍岡

それはお互い様じゃん。

種市

いやいや。俺は全然だけど、そういうのを見て、第一線を牽引してるんだなって思った。昔から伝統と格式もあるんだなぁぐらいにしか思ってなかったけど、違う業種で継いで形にしてるのがすごいと思った。陰で自慢させてもらってますよ。俺はあんなすごいやつと学生時代から友達だって。

靍岡

それもお互い様。息子の友達からこの人カッコイイって見せてもらったらタネだったみたいな(笑)。

種市

それは嬉しかったね。20代の子たちに意外と響くんだってのは。ただ、ほんとにツルは変わらないね。お金持つとか、地位を築くと、ちょっと天狗になる人もいるけど、正直何も変わらない。
あと共通するのはサーフィン。僕は途中で洋服屋さんに入った時期はあまりやっていなかった時があったけど、今は復活した。フリーランスになって、時間を自分で調整できるようになったので、今は昔よりも楽しく向き合っているつもりです。

靍岡

それで言うとインスタグラムを見てるとこんなに遊んでて、仕事してるのかなって思うよ(笑)。

鶴仙園の植物は
バッグボーンもあって
ただの流行りのものではない

大学時代からの話に花が咲きましたが、ここからは本題に入っていきます。まず、靍岡さんご自身は ESTNATIONにどのようなイメージを持ってましたか?

靍岡

ESTNATIONはセレクトショップの中でもゴージャスというか、気品あるものを取り扱っているお店だなってイメージ。クラシックなフォーマルから、最近の流行りファッションまで幅広く、こだわりが強いお店だなって感じます。前々から家族ではお邪魔させてもらっていて、ショップの雰囲気もいいし買い物もしやすい。

そんなESTNATIONから、今回の企画のオファーが来た時の印象も教えてください。

靍岡

俺でいいのって。

一同

(笑)。

種市

前回の鷲頭くんとも話したけど、この企画ではアパレルだけじゃなく、異業種をやっている人も交えた方がいいと思ったんだよね。今のラグジュアリーを紐解いていくうえで、ウェルネスだったり、豊かさがあったりすると思う。ただ。ただ僕らが若い頃はクラブもあったけど派手なディスコもまだたくさんあって、ブランドスーツを着てとにかく高い車とか乗った友人知人もたくさんいたなぁ。

靍岡

ギンギラギンのね。あとはブランドものを着てみたいなとか。

種市

当時の僕らが思っていたラグジュアリーというのはそういうところだった。だけど、いろいろなことを経験してきて、時代背景も変わって何がラグジュアリーか捉え方が変わってきていると思う。だからそういう変化とともにいろいろな人がどのように今考えているのかを聞きたいと思って、まさにそうだと思った。
というか、真っ先にツルが思い浮かんだ。あとは鷲頭くんが会いたい、お店に行きたいっていう私的な理由ですね(笑)。

鷲頭

ありがとうございます。やはり鶴仙園の植物はバッグボーンもあって、ただの流行りのものではないんですよね。

種市

確かに今はみんなが欲しいとなっているけど、昔から愚直にいいものを提供している。その本物感が世に伝わっているから、著名人からもお墨付きを貰えるよね。

靍岡

そう言ってもらえると光栄だね。

種市

ここと組めば間違いないと思われるものを築いているのがすごい。そういう礎がラグジュアリーというか、豊かさに通じる。

鷲頭

芯を感じますよね。だからこそ靍岡さんのラグジュアリーを聞いてみたかったんです。

歴史を重んじつつ、
新しいことに
まだまだ挑戦していける

その言葉を聞いて、靍岡さんはラグジュアリーをどのように捉えていますか?

靍岡

僕はこれまで植物の世界でしか生きてこなかったんです。ただ、最近になって植木鉢と植物との掛け合わせが文化になってきている。そこでファッション業界の方とも繋がれるようになった。この鉢合わせはファッションでいうと、洋服を合わせるみたいなイメージ。

種市

植物が人間、植木鉢が洋服みたいなことか。

靍岡

そういうリンクが起こってきているんだけど、植物を買ったお客様がどうしようと実際は自由。でも、僕らはキレイに育ててほしい思いがあるので、成長することや花が咲くところに共感が持てて、一緒に話ができるのかが大事だと考えている。例え500円で買った植物でもその人にとっては、愛でる時間や育てる工程がラグジュアリーなのかなっていう感じですね。

種市

いい話をするじゃん。やっぱテレビ出てるだけあるなぁ。口下手だったから少し心配だったけど、完璧(笑)。でもその通りだと思うよ。

靍岡

やはりキレイに育てて、花が咲いたってことに幸せを感じられるのがラグジュアリー。ファッションで言えば洋服で高級なものを買うことも一つのラグジュアリーだし、本当に幅が広がったと思う。最近、お客さんの接客をしていてそう思いますね。

鷲頭

すごく素敵な話。植物界のエルメスですね。

種市

ウマイ事言った顔するな(笑)

鷲頭

老舗なんでね。

種市

あ、確かに。老舗ってラグジュアリーと言えばラグジュアリーだ。

靍岡

うちは1930年から、祖父が始めて今に至るね。

種市

年月を積み重ねるということはラグジュアリーだよ。お金でどうにもできないことだし。

鷲頭

お客さんに愛されているから続けられていますもんね。

種市

本とかも色々出しているもんね。それは言葉も出てくるわ。

靍岡

いやいや(笑)。あと、今ちょうど父親と息子の3世代でやっているからお客さんの幅も広いんだよね。

種市

確かに面白い。ミックス感があるというか。

靍岡

だから、歴史を重んじつつ、新しいことにまだまだ挑戦していけるかな。自分自身も50歳で終わらないようにしなきゃなって思った。

鷲頭

エストネーションでもそういうことを目指したいです。

種市

ちょっと自分の今と比べて、こいつって思ってしまった(笑)。親父さん74歳、ツル50歳、息子25歳。いいバランスで今後も心配ない。誠実にやってるが故にだね。地味で体力のいる仕事なのに。

靍岡

元々は表舞台に立たない地味な裏方みたいなこと。お客様の代わりに植物を探して、提案するというのが仕事なので。最近はNHKの趣味の園芸で講師としてテレビにも出させてもらっているけど。

種市

本物を伝えるための活動としては大事だね。

靍岡

NHKに出れるってなかなかないことだと思う。この経験は自分の成長にもなったね。

種市

それは老舗たる安心感だよ。やはり、時間が経つこととか老舗というのがラグジュアリーなのは確かだね。あとは植物に携わっていることも。

靍岡

植物にもいろいろな価値のつけ方がある。多肉植物やサボテンは種類が多いから、お客さんにもアプローチしやすい。現会長はもともとサボテンをメインにやっていたんだけど、僕はハオルチアという種類が個人的に好き。

種市

これは多肉植物になるの?

靍岡

そう。南アフリカ原産で、葉っぱがキラキラしていて、横から見るとトカゲの模様みたいに見える。そういう細かいところが魅力。

種市

そこを愛でるんだ。そういえば南アフリカも行ってたもんね。本場に旅行じゃなくて、植物を見に行くって。

靍岡

あの旅があったからこそ今の自分があるね。自生地の環境を見て、育ってる植物を見て、日本だとこうなってるんだというのがわかる。それによってまた栽培方法も変わる。その行動を起こした時間も1つのラグジュアリーだよね。

種市

キラーワードを紡ぎ出してくるね。

靍岡

さっき考えてたんだよ(笑)。

種市

でもすごいよね。現地に見に行こうと思って行くって。

靍岡

同世代でカクタス長田の研さんがいて、その方は英語ペラペラなんで全てナビゲートしてもらったんだよね。きっかけはそこの会長がお前らNHKの講師やってるんだから、現地で見てこいって言ってくれて。21日間、南アフリカを回ったのは、本当に自分にとってラグジュアリーな時間だった。

種市

そんなに長い期間だったんだ。

靍岡

翌年にはチリを20日間回った。それで次はアメリカだと思ったら流行病にかかってしまったんだよね。

種市

そうだったんだ。じゃあまた機会があったら行くかもしれない?

靍岡

会長のお許しが出ればだけど、また自生地をめぐる旅をさせてもらえればなと思ってる。やっぱり本物の植物を見ると自分の気持ちも変わるんだよね。あとは売っていて、信用されるというか説得力が自分につく。植物に興味を持ったお客さんとあれがいい、これがいいなどの話をできるのが一番楽しい。それが僕のライフスタイルになっているね。

社会的な地位とか
関係なく、
植物の話をする時は対等

話変わりまして、昨今ファッション側が植物業界に寄ってきてるように思うのですが、靍岡さんはどう感じますか?

靍岡

やはり多肉植物のフォルムって独特なんですよね。そのかっこよさからデザイナーやアーティストの方がインスピレーションを受けていることも多いんじゃないかなと思います。ただ、実際育ててみると生き物なので難しいんですよね。ちゃんと植物が育つような環境を整えてから迎えないとダメになってしまう。

種市

男の人はこういうジャンルが好きだよね。スニーカーやプラモデルのコレクションではないけど、形が単純にかっこいいとかキレイとかあるよね。

靍岡

あとは社会的な地位とか関係なく、植物の話をする時は対等なんだよね。だから、その時間が僕は好き。どんなに目上の人でも、植物を介して話すと少年に戻るというか。

種市

確かにキラキラした目であれがいい、これがいいとかね。ただ、そこで高ければいいって話でもないし。その中でも俺はこれがいいって個性やスタイルが出せる。

靍岡

もちろん選んだのがたまたま高い場合もあるけど、1000円や3000円でも育てていくうえでキレイに育っていく種類は沢山ある。

種市さんご自身は植物は?

種市

僕はもちろん植物は好きだし、それこそツルのところでサボテンの水やりを手伝っていた時は親が好きだったということもあって、沢山貰ったものを実家に持って帰ってました。ただ、今はあの時の水やりが大変だったトラウマがあるので、あまりやりたくないってのが本心(笑)。あと、今住んでいるところが木々に囲まれているから育てる必要がないんですよ(笑)。

靍岡

それは言い訳。

種市

いやいや、だからこそ緑の力を感じるよ。すごく落ち着く。鷲頭くんにも言われたんだけど、種市さんの家って気がいいですよねって。そう言うことだなって。

靍岡

それでいうと僕らも朝、温室に入ると植物の匂いってあるんですよ。その匂いってすごく心地よくて癒される。

種市

それは感じる。だから、植物のない場所に住んでたら育てるんだろうなと思う。そういうバランスはあるかも。

靍岡

癒しを与えてくれるものの一つだよね。

最後に鶴仙園での今後の取り組みや挑戦したいことを教えてください。

靍岡

まず育てるということの面白さや、植物のここがいいなどの魅力を伝えることを続けたい。そこで、植物を愛でることによって気持ちが安らぐ。その心のやすらぎや余裕を持てることがラグジュアリーだと思います。

種市

あと熱中することがあるってこともラグジュアリーだよね。実際現地にまで足を運んで見てるわけだし。

靍岡

そうだね。地面に這いつくばって植物を観察した時の感動は計り知れなかった。

種市

そういうマインドで入れるのが素敵だよ。あと未来の話で言うと息子の世代になったら時代が進化して、メタバースとかNFTとかもやってるかもね。

靍岡

わからないけど、ありえるよね。歴史を崩さず、新しいことにチャレンジし続けたいし、やってほしい。何か始めないと続かないし、始めないとつまらないと思う。

種市

それはサーフィンでもそうだね。チャージしないと波に乗れるかわかんないみたいな。ただ、そこであまりにも変なことばっかりやってるとダメになる。

靍岡

疑われてしまうね。ちゃんと精査しながらね。

種市

そのバランス感のよさはサーファーならではだよね。これが絞めとしていいかな(笑)。

靍岡

波選びから始めるみたいなね(笑)。

種市

今日はツルの日なんでね。完璧でした。

Column

ここでは自身が思う“今”のラグジュアリーにまつわるものを紹介してもらいます。果たして、そのものにはどういった思い入れがあり、どのようにラグジュアリーを表現するのか。そんな逸品たちをお楽しみください。

ルアー

最初はルアーを沢山送ってくれて、いただいてばかりじゃ申し訳ないと思い、アガベをお返ししていた。 そのような関係を続けていたら、異業種コラボでやりませんかと声をかけて下さりこのルアーが誕生しました。

鶴仙園では植物だけでなく、LOCKFIELD EQUIPMENTやamane、F-LAGSTUF-F、spicy gemといったブランドとのコラボした鉢も展開しています。植物はもちろんのことですが、合わせる鉢を選ぶことも楽しんで頂けたら嬉しいんです。そういうところでも接客している時の話のネタとなるし、盛り上がると僕も楽しい。まつわるアイテムは今後も展開していきたいし、それが植物を愛でること、ラグジュアリーな時間へと繋がっていくように発信していきたいです。

鶴仙園

昭和5年創業の老舗サボテン、多肉植物専門店。90年に渡り培ってきたノウハウを活かし、サボテン、多肉植物、交配種など、さまざまな品種を取り扱うほか、南米やアフリカなどの海外からも積極的に輸入も行い、来客する人に常に新しい出会いと驚きを提供。現在、駒込の本店、池袋西武店の2店舗で営業を行い、専門用品や鉢などにも注力している。

〒170-0003 東京都豊島区駒込6-1-21
Tel 03-3917-1274
営業日 完全予約制

ARCHIVE

ISSUE 1 鷲頭 直樹
ESTNATION Men's Director

NAOKI WASHIZU

Planner

AKIRA TANEICHI

Photographer

YUMA YOSHITSUGU

Writer

KEI MATSUO (TEENY RANCH)