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ラグジュアリーの本質を追及し、 品質にこだわったものづくりによるタイムレスでクリーンなスタイルを提案する ESTNATION。ただ、そのラグジュアリーの定義とはいったいなんなのか。「豪華な」、「贅沢な」という意味だけで表現することが果たして本質なのか。フリープランナーの種市暁さんを水先案内人とし、それぞれが思い描くラグジュアリーを探す旅に出ます。

ARCHIVE

ISSUE 1 鷲頭 直樹
ISSUE 2 靍岡秀明
LUXURY OF ESTNATION

Issue.3

佐々木明

一日、一分一秒を大事にすること

「LUXURY OF ESTNATION」はファッション業界だけに限らず、様々な分野で活躍する人が今思うラグジュアリーについて語り合う連載企画。その第3弾となるゲストには、日本屈指のスキープレイヤーの佐々木明さんをお招きしました。今年、8季ぶりに競技スキーに復帰し、2026年のミラノ・コルティナダンペッツォ五輪を目指す同氏。果たして、アスリートが感じるラグジュアリーとは何なのか。今までとはまた違う目線のお話が聞けたので最後までお見逃しなく。

PROFILE

佐々木明

2002年から4大会連続でオリンピックに出場し、世界選手権、アルペンスキー・ワールドカップを転戦。アジア人として最多の3度の表彰台に上り詰めたトップスキーヤー。2014年レース活動を終え、ビッグマウンテンスキーヤーとして、老若男女あらゆる人にスキーの楽しさを普及。2023年には現役に復帰し、次回オリンピックの表彰台を目指している。

LUXURY OF ESTNATION ISSUE 3

INTERVIEW

パフォーマンスを発揮してとか、
世界1位を決めるとかの発想じゃなくて、
オリンピックは生き方の哲学

植物を取り扱う靍岡さんに続いて、今回はアスリートの佐々木さん。またまた違った分野で活躍する方ですが、お二人の関係は?

佐々木

種市さんと知り合ったのはついこの間ですよね。

種市

そうそう。共通の友人がいて、紹介してもらった。同じあきらという名前で、サーフィンも好きなめっちゃ面白い奴がいるからって。それで会ってみたら面白いというか、メチャクチャすごいやつじゃんってなった。

佐々木

それでいうと初対面の時はサーフィンの話しかしてないですよ(笑)

種市

後々、この人4回もオリンピック出てるんだよなって思い返した(笑)

佐々木

サーフィン好きが揃うとそうなりますよね。

種市

確か、一番最初に影響を受けたのはドッグタウンのジェイ・アダムスがスケートで滑っている姿だったんだよね。そんな感じでスキーでも滑っている映像を見せてもらって、こんなに自由ですごいんだと思った。ただ、普段やっているアルペンスキーっていうのは真逆なことで、F1のようにミリ単位でスピードを競う。F1とパリダカを一緒にやってるような感じ?

佐々木

そうですね。まさに。

種市

その両方の感覚を持っているから、話を聞いててすごく楽しかったんだよね。繋がっている人たちも一流ばかりだったし。

佐々木

求めてないジャンルの人たちまでいましたけどね(笑)

種市

あとはレゲェも好きだから、幅広いジャンルのカルチャーに精通してる。そして、この人柄だから、惹きつけるよね。そして、今8年間のブランクがあったけど、現役に復帰。その決断もすごいと思った。

佐々木

いやぁ何事も勇気が必要ですよね。

種市

そうだろうけど、こっちからすると想像できないこと。

佐々木

それで言うと自分ってビビりというか、普通なんですよ。

種市

そうなの?全然信じられないけど(笑)

佐々木

どっちかと言うと普通だなって思ってほしいんですよ。例えば、今働いている会社を辞めるとなったら、勇気がいるじゃないですか。今後どうなるかわからないし、どう稼いだらいいかわからない。でも、辞めずに今の場所にいたらそれなりの安定と稼ぎが見えるじゃないですか。そのコンフォータブルゾーンにいることに満足というか、普通になっているのかをジャッジするのが僕は早いだけなんですよ。普通じゃ嫌だって思うのかどうなのか。

種市

早速耳が痛い話だなぁ(笑)

佐々木

そのゾーンでクリエイトして昇華できる能力があればいいんですけど、自分にはなかった。それって結局独りよがりじゃないですか。あと、もっと生き方の根底にあるのが、オリンピズムなんです。種市さんはオリンピック憲章って聞いたことありますか?

種市

それはなんとなく聞いたことあるね。

佐々木

じゃあオリンピックって何ですかって聞かれたら、どう答えます?

種市

世界平和を祈る大会とか。

佐々木

実は世の中の9割の人がそう思っているんですよ。あとはパフォーマンスの1番を決める大会とか。ただ、その憲章の中で1番最初に提唱していることが、オリンピックというのはそこまで努力する、喜びや苦しみを、よりクリエイトして昇華していくという生き方の哲学である。
さらには普遍的なものを社会や教育に還元していくことがオリンピズムである。それがスポーツの根源であって、勇気や平和をもたらすことというのは割と後にくる。今やっていることに誇りを持ち、クリエイトして昇華して、社会に還元するべきなのがオリンピアだということが書かれているんです。やはり、そこをベースに生きてしまうと、まだ世の中に何も返せてないなと思ってしまう。

種市

すごいね。

佐々木

最初にソルトレイクシティオリンピックに出たんですけど、その当時はなんでここにいるんだろうって思ったんですよ。目標にしていたのに。出てみたら、ワールドカップと変わらないなって。何ならいつもより観客が少ないなって思うぐらい。

種市

そうなんだね。

佐々木

そうなるとオリンピックって何なんだろうとなって、ちゃんと調べたんですよ。そうしたら憲章にこの内容が書かれていて、これはすごいなぁと思った。パフォーマンスを発揮してとか、世界1位を決めるとかの発想じゃなくて、生き方の哲学だよって。それから自分もちゃんとしようとなりました(笑)

鷲頭

もうすでにこの話で胸がいっぱいですね。

種市

そんな深い話、会った時は何もしてなかったじゃん(笑)

佐々木

だって、サーフィンの話する方が楽しいじゃないですか(笑)

種市

そういう引き出し持っているんだ。ちょっと感動しちゃったよ。

佐々木

これは日本オリンピック委員会の人にもですけど、聞くようにしているんです。自分の中では、それだけとてつもないものになってしまったんで。地球規模の話になって、精神論の話になって、哲学の話になってしまったもんだから、それこそオリンピックにまつわるしょうもないニュースをみると、そいつらの頭を引っ叩きたくなります。

種市

これは次のオリンピックを見る前にちゃんと自分でも調べたくなった。この連載じゃなくて特集記事でまとめたい内容になってきた。

自分にとっての
ラグジュアリーは、
時間を大事にして生きてられる時間

サーフィンもあってのお二人の出会いでしたが、佐々木さんが始めたきっかけは何だったんですか?

佐々木

MIGHTY CROWNのSAMI-Tというアーティストがサーフィンをはじめてて、今村あっちくんってプロサーファーのところに連れてってくれた。

種市

レジェンドサーファーの今村厚さんだ。

佐々木

そのあっちくんにスポンジボードを押してもらった瞬間にハマりましたね。こんな楽しいものは他にはないと思って。それで住むしかないなと思って、辻堂に家をすぐ借りました。それが、34歳の時ですね。

種市

その時は何の仕事してたの?

佐々木

実はSALOMONがお金をくれてたんです。

一同

(笑)

佐々木

いや、SALOMONがすごいなって思ったのが、契約をきらずにビックマウンテンスキーヤーとして席を残してくれたことですね。

種市さんは初対面の時から、佐々木さんにこの企画に声をかけようとお考えだったんですか?

種市

いや、いきなり会ったから、そこまで考えてなかったね。ただ、初めからめっちゃ面白いなって思ったから、どこかのタイミングでは出て欲しいなって後々思った。ただ、明くんもオリンピックに再挑戦するとなって世界も回るし、リハビリのことも聞いていた。だから、あんまりいくらこうやって仲良くなったからって、おいそれよと声はかけれなかった。

佐々木

でも、すぐメッセージくれたじゃないですか(笑)

種市

いやいや結構経ってたって(笑)

佐々木

自分もすぐ返信しましたけど(笑)

種市

ちゃんと相手へのリスペクトがあるんだよ。だからいつかどこかのタイミングではと思っていた。この連載も、今やラグジュアリーの概念が変わってきて、昔みたいにお金持ってて、いい家に住んで、いい車乗って、いいもの食べて、ブランドものを着てって感じだけではなくなってきた。
あと、ESTNATIONの六本木ヒルズ店に行ってみてもらえばわかるけど、ラグジュアリーショップとしては世界トップクラスだと思う。だからこそ、逆に今のラグジュアリーって何だろうという話を色々な人に聞いてみたくなった。自分達にとってもいい影響もあるから。そこで明くんが見てきた世界を聞きたいと思って声をかけました。

佐々木

それで言うと僕は定義を持たないことにフォーカスしてるんですよ。よく器が大きいって話がありますけど、一番は持たないことが大きいし、受け皿を持たないことは固定概念を持たないことに繋がる。あと、ザルと言っても目があるから、どこかに引っかかるから足踏みしてしまう。それが自分でいうと新しいことに挑戦するときに無理かもしれないとか、年齢とかを気にしてしまうのが、ザルの状態。それをできるだけ、すんなり行けるということが大事。その足踏みをしてまう時間を無駄にしてしまう。だから、時間をどうやって使うかが一番大事にしていることなんです。
あと、もっと言うと死ぬのが怖い。これは小学生から変わっていなくて、母親の実家にいた犬が大嫌いだったんだけど、亡くなった時に誰よりも号泣したんですよ。その時、初めて死を感じて、その後も可愛がってくれた祖父とかの葬式とかも体験していくと、自分の両親がいつか死ぬかと思うとすごく怖くなった。そこから時間、時間になるようになった。

種市

その死生観なのに、一歩間違ったら死ぬかもしれないことをやっているのは何なんだろうね。

佐々木

それは調整なんだと思ってます。死ぬのが怖いから、生きてることを感じてないと生きれないっていう。時間を大切にするには生きた心地とか、努力した喜びや苦しみとかがないと感じられない。この8年間はそれに似てて、頑張ってるのかなって感覚があった。

種市

なるほど。

佐々木

あと、オリンピックって簡単なんですよ。何が簡単かって言うと、僕のレースは1日。しかもプレイ時間は最大2分。その2分のために365日掛け3年間と、364日と23時間58分を注ぐわけじゃないですか。その1日も力を抜かずやるという目標と比べて、はっきりとした目標のないものって歩みづらいんですよ。さっき言ったコンフォータブルゾーンに甘えてしまうと時間をものすごく無駄にしてしまう。
だから、自分にとってのラグジュアリーは、時間を大事にして生きてられる時間。無駄にしてる時間も当然あるけど。その時に色々と目に写しておきたいと思って、携帯電話を2個持ったり、デジタルカメラを持ち歩いたりしている。世界中の色々なところに行くので、それは残しておきたい。ただ、本当は撮られたいのに、自分がカメラ持ってるって辛いですよね。撮られたいのに撮ってばかりいるって(笑)。

オリンピックの選手たちは
パンツ一丁のやつにまで
感動を与えてくれる

佐々木

逆に何か聞き出してくださいよ。

種市

いやいや、今の話を聞いていてかっこよかったよ。普通の感覚の人からしたら、全然違うからね。時間を大事にして生きてられる時間がラグジュアリーっていうのは、明くんだから重みがすごい。ちなみにそれって年齢を重ねていくごとに変わってきたりはするの?

佐々木

変わらないですかね。ただ、この挑戦が最後かなと思っています。次のオリンピックは44歳なんですけど、それって生まれた月、年で挑戦できるかどうかが全然違うんですよ。この前の東京オリンピックが1年遅れたじゃないですか。その時って本来メダルを取る人の50%が取れなかった。あと、本来出る人の30%が出れなかったんです。それぐらいオリンピックって誕生日によって4回出れることもあれば、1回も出れないかもしれないっていうぐらいタイミングで全て変わってくる。だから自分は生きていくタイミングで、一番多くオリンピックに挑戦できる年齢のスパイラルに入ってると思う。
あと、細胞学的に無理なんですよね。アスリートのプライムタイムは、男性が23歳か24歳。女性でいうと19歳か20歳と言われている。そこからは経験値で伸びていく。ただ、もう30代になると落ちていくと口にしてしまうんです。そうやって決めつけてしまうと、実際そうなる。だからデータ的に落ちていくのを加速させるか、キープさせるかはマインドと日々の過ごし方でしかない。そこで僕は幸いサーフィンと出会ったので、明らかに自分よりも大先輩たちの勢いを感じることができたんです。

種市

サーフィン業界は確かにそうだね(笑)

佐々木

なんで、その年齢で一番のローカル感出してるのって(笑)。サーフィンを見ていたら、そのケースにハマらないんですよ。

種市

ケリー・スレイターも50代で、世界最高峰にいるしね。

佐々木

それを見た時に本当にマインド次第なんだなって思った。だから海の人って30とか40だからっていう年齢に影響を受けてないなって。そう言う人達と接していたから、僕自身もそういうマインドにならなかった。サーフィンのおかげですね。
ただ、その反面オリンピアン研修とかで、指導する側にもいた。だから一般的な社会の中でも生きてるんですよ。サーフィンをしながらも。一方では講師としてやっていると普通の考えの話も聞くんですよ。同調しておいた方がいいんじゃないかっていう会議とかあると、40歳だしとか思うようになる。これ言ったらいい歳して変なやつだなって思われるかなって。

種市

ちょっと大人っぽく振る舞っていた方がいいかなってね。

佐々木

しまいにはオリンピック選手を産むための日本代表の国内強化ヘッドコーチをやっていたんです。大学生以下の全ての育成プログラムとか、強化方針を作る側だった。あと、オリンピックの基準を作る側だったんです。それをいきなり、またオリンピックに出るってなったら、色々な人がテンパるじゃないですか(笑)

種市

作ってた側の人が俺出るわって、周りは驚くよ(笑)。それをひっくり返して出ようとするのもすごいよ。

佐々木

やっぱりサーフィンの世界が周りに影響されずにやっていることプラス、東京と北京のオリンピックが続けて開催されたことが大きかった。それも時間というか、空間の話になるんですけど、東京が1年遅れて北京が半年経たずにあったじゃないですか。東京オリンピックは見てて何も思わなかったんです。だけど、北京オリンピックの時は自分が流行病になって、たまたま東京オリンピックの時と同じホテルに2週間いたんですよ。で、全く同じ部屋で、ベッドに転がってテレビを見るじゃないですか、オリンピックすごいなってリモコンを持って、携帯でたまにインスタチェックしてみたいな。で、すごいパフォーマンスを見て、感動するんですよ。彼らの頑張ってきた時間もわかるし、失敗した時のインタビューで自分の感情を殺してるかもわかるし、それでパンツ一丁で号泣してる(笑)

一同

(笑)

佐々木

そこで色々おかしいぞってなって、俺は何やってんだって思って。この時間の使い方に情けなくなって。何に感動してるかって、オリンピアンたちが努力する姿。あとは、失敗した時に日本を背負ってるからすいませんって言っちゃうんです。謝る必要なんてないのに、ただ謝ってしまう気持ちもわかる。こういう選手たちってパンツ一丁のやつにまで感動を与えてくれるじゃないですか。それを見た時に、俺がいるのはあっちだなと思って決めた。この空間にやられましたね。2ヶ月ぐらいそこで本当に時間を無駄にしてたなって。

種市

その気づきがあったから無駄じゃないと思うけど。

佐々木

ここで、一個の“やる”ということをチョイスできたからよかった。だから、時間がどれだけ大事かっていうことですよね。

種市

なかなか難しいよね。実際ダラダラしてしまっている自分がいるし。ただ、オリンピックってそういう人達がしのぎを削ってるんだろうね。

今の世界のリゾートを
引っ張ってるのが
スノー業界なんです

佐々木さんご自身はESTNATIONにどのようなイメージを持っていますか?

佐々木

六本木ヒルズの店舗はとにかく大きいイメージ。赤羽橋に住んでいたこともあったので、よく通ってましたね。入口からいい香りがするから、気づいたら入ってしまってるんですよ。ただ、お金はそんなに持ってないので......(笑)

一同

(笑)

佐々木

実はスキーで稼いだものはスキーに使うというルールを設けているんです。そうやって全て投資してたからスキーに関しては、自由な動きができる。だから、講演とかを行ってるんですよ。

種市

だから話が上手いんだ。ESTNATIONにも服のスポンサードしてもらったほうがいいんじゃない(笑)

佐々木

ぜひお願いします!

種市

明くんは肌艶良くて、かっこいいからエストネーションっぽいよね。ミニマムでスタイリッシュ。

佐々木

変身させて欲しいですよ。

種市

いやこのままでも十分だよ。会った時も思ったし、体も仕上がってるし、雰囲気もある。

佐々木

最近韓国ドラマも見てますから(笑)

種市

そこ?(笑)。これからの活動としてはこれからアルゼンチンの方に行くの?

佐々木

そうですね。8月にアルゼンチンか、ニュージーランドに行きます。9月末には日本に帰ってきて、そこからまたヨーロッパに行く予定。まだレーススケジュールが出てないんで、出たら組んでいくという感じですね。世界中色々なところに行けるのはアスリートの強み。しかもスキーはリゾート地にも行くんで。

種市

そういうところってラグジュアリーな場所にも行くの?

佐々木

行きますね。スノーリゾートで言うと、今ぶっちぎってるのはアメリカのコロラド州にあるベイル&アスペン。ちなみにここは駐車場の一番近い所で一日いくらだと思いますか?

種市

駐車場代?高いって言っても5000円とか?

佐々木

これが600ドル。

種市

駐車場代で?リフト代いくらになるの?

佐々木

リフトはレートで変わるんですけど、一番高かった時で270ドル。

種市

なんでそんなに高いの?人気があるから?

佐々木

それもあるんですけど、そういう場所に来るお客さんの層をちゃんと精査しているんです。

種市

セグメントしてるんだ。

佐々木

でも、それだけの金額を取ってるっていうことはちゃんと投資もやっている。だから、今の世界のリゾートを引っ張ってるのがスノー業界なんです。あと、ヨーロッパでいうとフランスのクーシュベルというところがあるんですけど、そこはスキー場内に空港も作られていてプライベートジェットで行けるようなラグジュアリー感を提供してるんです。そういう場所ってローカルと融合してるので、なんか格式がちゃんとしてるのがいいんですよ。

種市

それってラグジュアリーの本質をついてるかもね。単にお金を持っているから入れるとかじゃないというか。

佐々木

もう一つ面白いのが、アメリカのモンタナ州にあるイエローストーン・クラブって会員制のところ。ここは一代で富を得ている上に、パーソナルなところを見るために面接があるんです。

種市

それもまたすごいね。

佐々木

しっかりしている人、面白い人、心が豊かな人などパーソナルがしっかりしている人だけがそこの会員になれる。ただ、そこのゲートをくぐるとニセコ5個分ぐらいのスキー場があるんです。そこはメキシコのテキーラ会社の会長とか、シリコンバレーの中でも選ばれた人とか、しっかりとした空間にするための人選が行われている。誰も嫌な思いをしないとか、背伸びしないとか、整えられたリゾートなんですよ。

種市

それは本物のラグジュアリーだ。

鷲頭

そういうところ欲しいですけど、ほとんどの人が入れないじゃないですか(笑)

種市

でも、明くんは実際に入ってるってことだよね?

佐々木

それはアンバサダーをやっているスコット・シュミットのおかげですね。ビックマウンテンの元祖と呼ばれる人で、THE NORTH FACEと契約しているんです。それもあって、そのレジェンドに会いに行くっていう体で入れたってだけですよ。

種市

それも明くんだからだよ。そういうところの経験値がやっぱり違う。今後の活動も応援していきたいし、ミラノのオリンピック後にまた話を聞きたい。色々な引き出しがまた増えてそう。

Column

ここでは自身が思う“今”のラグジュアリーにまつわるものを紹介してもらいます。果たして、そのものにはどういった思い入れがあり、どのようにラグジュアリーを表現するのか。そんな逸品たちをお楽しみください。

SALOMONのスキー板

普通の選手だったら3年ぐらいで替えるんですが、この板は10年ぐらい使っています。板のエッジは刃物と言ってもいいぐらい鋭くて、これでスケートリンクを滑ることができます。実際にレース前もコースに水を撒いて固めるので、スピードを出すためにはこのエッジが大事。現役復帰してからは自分で、専用マシーンを使って86度か87度に調整しています

SALOMONのスキーブーツ

プロ仕様のブーツは、一般の人が履いて滑ったら硬すぎて骨が折れると思うぐらい強靭。自分も久しぶりに履いた時は耐えられなかったので、バックルを緩めた状態から慣らしていきました。あとは、ブーツの中にシンガードも入れるんですが、カーボンなんで反発力がまさって100分の何秒が早くなるんです。 そういう1つ1つの道具も結果を左右しますね。

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ISSUE 1 鷲頭 直樹
ISSUE 2 靍岡秀明
ESTNATION Men's Director

NAOKI WASHIZU

Planner

AKIRA TANEICHI

Photographer

YUMA YOSHITSUGU

Writer

KEI MATSUO (TEENY RANCH)

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