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ラグジュアリーの本質を追及し、 品質にこだわったものづくりによるタイムレスでクリーンなスタイルを提案する ESTNATION。ただ、そのラグジュアリーの定義とはいったいなんなのか。「豪華な」、「贅沢な」という意味だけで表現することが果たして本質なのか。フリープランナーの種市暁さんを水先案内人とし、それぞれが思い描くラグジュアリーを探す旅に出ます。

ARCHIVE

ISSUE 1 鷲頭 直樹
ISSUE 2 靍岡秀明
ISSUE 3 佐々木明
ISSUE 4 佐藤大介
LUXURY OF ESTNATION

Issue 5(前編)

近藤 昌

ラグジュアリーが何かって言うと
僕の中ではもう薪なんです。

ジャンルレスな分野の第一線を牽引する人々が今思うラグジュアリーについて語り合う連載企画「LUXURY OF ESTNATION」。第5弾となるゲストには、伝説のスタイリストと称され、30年以上に渡って著名人のスタイリングやブランドのプロデュースを手がけ、今もなお第一線で活動を続ける近藤昌氏が登場。長きに渡ってファッションシーンに携わり、現在2拠点生活をしながらバリスタとしても活躍するレジェンドのラグジュアリー。今回は前編後編の2回に分けてお届けしていきます。

PROFILE

近藤 昌

企画制作会社TOOLS代表。80年代から一線で活動を続けているスタイリスト。現在も、日本を代表するトップアスリート、ミュージシャン、アーティスト、俳優のスタイリングを手がけるほか、衣食住に関わる幅広いショッププロデュース、イベント企画やブランディングを行うなど、ジャンルレスに活躍。また、東京と千葉県一宮の二拠点生活を送りながら、週末はコーヒーを淹れるバリスタとしてSTREAMER FIELDPOST(ストリーマーフィールドポスト)を運営している。

LUXURY OF ESTNATION ISSUE 5

INTERVIEW

なんかもっとこうラフで
アンダーグラウンド的な
場所を作りたかった。

種市さんにとっても先輩にあたる近藤さん。お二人の出会いはどういった経緯でしょうか?

種市

そもそも近藤さんはスタイリストがスタイリストという名前になる前から、スタイリストとして活躍していた大先輩。近藤さんが初めてなったっていうことでいいんですかね?

近藤

いやいや(笑)。気づいたら、スタイリストって名前になったっていう感じですね。

種市

そもそもスタイリストっていう名前って誰がつけたんですか?

近藤

いや、どうでしょうかね。やっぱりマガジンハウスですかね。それまではあんまりそういう呼ばれ方してないですよ。編集者とかだったから。

種市

あ、そういうことなんですね。 その経歴も知っていたので、僕の中でも大御所中の大御所。だから、僕らがおいそれと声をかけられるような存在ではなかったんですけど、たまたま都市開発とかでホテルとかレストラン作ってる共通の知り合いがいて、紹介という縁があってお会いする機会があった。その時に近藤さんがすごく優しくしてくださって、大御所なのにこんなに優しいっていう。

近藤

日本一腰の低いスタイリストですからね(笑)

一同

(笑)

種市

とにかくマイルドだった。当時を知るワッシー(鷲頭)はやっぱり怖かったって言ってましたよ。

近藤

本当ですか?

種市

いやいや、それこそ松任谷正隆さんや本田圭佑さんなどの錚々たる方々のスタイリングをやっているじゃないですか。

近藤

そうですね。

種市

あと、スタイリストをやりながらバーもやってたんですよね。

近藤

TOOLS BARを1985年ぐらいからやってましたね。まだ、日本ではディスコみたいなのしかなかったんですが、当時遊びに行ってもよく入り口で黒服に入れないとか言われて、ふざけんなよとか思いながら帰ってたんです。そこで、なんかもっとこうラフでアンダーグラウンド的な場所を作りたかった。だから名前もクラブっていう感じにして、日替わりのDJとかを入れて、営業していました。

種市

その時代に、今のクラブの先駆的な動きをしていたんですね。

近藤

入場料1500円のスタンプっていう、システムは僕たちが作ったんだと思いますね。

種市

この時点ですごい。システムを作ったことは自分も知らなかったんですけど、そうだったんですね。当時の先輩からTOOLS BARの話を聞いていたんですが、自分たちが行ったことはなかったんですよ。

近藤

金曜日のレゲエナイトっていうのが当たっちゃって結構賑わっていましたね。それこそ、西麻布の交差点の方まで並ぶようになって。あと、海外のタレントさんがいっぱい来てくれましたね。ダリルホールが来てくれたり、あとキースヘリングがまだ生きてた時はお店を気に入ってくれて、壁にいっぱい描いてくれた。

種市

ええ!もうその壁は今ないですもんね。残っていたらすごいことになってたんじゃないですか。

近藤

そうですよね。でも、なんかバスキアの絵もあったとかって人から言われるんですけど。

種市

もう、この話でも分かるでしょ。どういう方かっていうことが。スタイリストって名前が出る前にやっていて、クラブができる前に作っていた。それでいうとZOZOも立ち上げお手伝いしていたんですよね。

近藤

そうですね。ウェブ上で洋服を販売するシステムを作るので、洋服を集めるってことで僕のところに連絡がありました。なので、そこから企画書をいろんなところに持って行きましたね。

種市

なるほど。最初、僕らも前職の時に、オンラインショップに関してはどうなんだろうというのがあったんです。当時、まだオンラインだとサイズがあるものが売れるという印象がなかったですし。

近藤

そうですよね。だから営業に行っても断られていたし、近藤さん最近おかしいよねみたいなことを周りから散々言われて、いろんな人から心配されましたね。

種市

まぁそういう時代でしたよね。

近藤

「なんかヘンテコリンなこと言って街歩いてない?」って噂されてましたよ。そういうこともやりつつ、クラブの方も風営法みたいなのが出たんですが、うちはレストラン営業という形態でやっていたんです。ただ、5時までやっていたので苦情がすごくて、よく麻布警察署に行って始末書を書いてました。

一同

(笑)

松任谷さんに
物を売らない店員って
言われてました(笑)

種市

そのほかにも、CIBONEの立ち上げに関わってらっしゃいましたよね。お話しするとこういうマイルドな感じだけど、いろいろと歴史を作っていった方。というか、そのカルチャーから、クラブ、ファッションまで、多岐にわたる。それでいうとクロムハーツも近藤さんが一番最初に持ってきたんですよね。

近藤

そうですね。そもそもは僕はアメ横にどっぷりだったんで、 もうメイドインUSAを日本に入れたくてたまらなかったんです。

種市

そうだ。松任谷さんのやつで、近藤さんの記事を読ませていただいたんですが、もともと上野でショップスタッフをやっていたんですよね。そこからスタイリストというか松任谷さんのお手伝いをするようになった。

近藤

そうなんですよ。 すごく詳しいですね。

種市

ちゃんと調べたんですよ(笑)

近藤

その時にアメリカから荷物が入ってくると、僕たちはもうそれがもう愛しくて、あまり気やすく誰かにパッと買っていかれるのが気に食わなかった。とにかく、大事に思ってくれる人に売りたかったんですよ。

種市

なるほど。確かに僕が子供の時っていうか若い時に上野に行くとちょっと怖かったんですよね。ただ、老舗の面白い店がたくさんあったじゃないですか。先ほどの話でわかったんですけど、なんかちょっとおいそれと買える感じじゃなかった。ちょっとでも認めてもらわないと売ってもらえないというか、その空気感は僕の時もありました。

近藤

まだ早いよとか、いろんなこと言いながら売らなかった。だから、松任谷さんに物を売らない店員って言われてました(笑)

種市

でも、それって別にハイブランドとか、値段が高いとか安いとかいう話じゃなくて、そのものがいかに面白いっていうことですよね。プライドを持って、そういうところに価値を持たせるっていう。

近藤

当時ちょっとおぼっちゃまとかがお金だけ持って買いに来ると、もう売らないみたいな。もっとこれに対しての思い入れをちょっと言ってみろみたいな。

種市

この連載の主であるラグジュアリーにも、この話に通じますよね。

近藤

え、本当ですか?(笑)

種市

繋がりますよ。そういうことじゃないですか、豊かさというか、ラグジュアリーって。やっぱり、ハイなものも全部見てきたうえで、普通のものに対しても価値を見出している。そういうのの先駆けですもんね。

近藤

ここ最近よく本当にそういうことを思うようになりましたね。

薪がたくさんあることが、
すごくお金よりも
価値があると思うんです。

この連載のお話を受けた時はいかがでしたか?

近藤

種市さんから、この話を聞いてラグジュアリーってどういうことなのかって色々考えてみたんです。ちなみに今まで登場した方はどんな感じだったんですか?

種市

これまでシェフだったり、オリンピックで4回金メダル取ってる方がいたり、あとサボテンのすごい方がいたり、 あとは鷲頭くんとやってます。その中でも中身がないのは第1回だけです(笑)。あとはもう皆さんの価値観なので、ルールはないんです。その人のラグジュアリーというか考え方が面白いので。

近藤

なるほど。じゃあラグジュアリーが何かって言うと僕の中ではもう薪なんです。

種市

え!木の薪ですか?

近藤

はい。もので言うとですけどね。薪はストーブに入れるために使うんですけど、そのストーブが実は欲しかったんですけど、ちょっと高いんですね。

種市

やっぱり、そうですよね。暖炉というかそういうことですよね。

近藤

これを手に入れるにはクロムハーツ仕様のロレックスの時計を売るしかないと思って。この時計も年に1回か、2回か、何回かするぐらいで、みんなにすごいとか言われていたんです。今はそれを売って、家の中にある薪ストーブになりました。

種市

ラグジュアリーの変換ですね。

近藤

そうですね。なので、うちの薪ストーブはクロムハーツって呼んでます(笑)。

一同

(笑)

種市

でも、それが価値とか、豊かさってことですよね。 近藤さんにとって、そのロレックスをつけてることよりも意味があるというか。

近藤

こんな話で大丈夫でしたか?

種市

素晴らしい。すごく響きました。

近藤

薪ストーブは、まずその上で調理ができます。お湯を沸かしとくと沸騰しないんで、ずっと加湿されているので家が全部温まって洗濯物が乾く。燃えるゴミも全部燃えるんですね。そして小さな灰になるんですけど、それすらも肥料になる。で、灰のところで作る焼き芋は最高なんですよ。その価値観の違いっていうのが僕のラグジュアリーなのかな。結局は心のゆとりかなって。

種市

その境地はすごいですね。

近藤

薪がたくさんあることが、すごくお金よりも価値があると思うんです。世の中何かあったら、うちでも畑やってるんですけど、お金があっても食べ物が買えない。やっぱり畑やってる人が1番安心だし、電気がなくなったら薪ストーブは暖かいし、そういうものの変換というか、振り幅っていうのが価値観というか、ゆとりというかになる。7年前に2拠点生活をやり始めて、すごく感じました。

経歴の話から気づけば、予想外の薪ストーブで感じる近藤さんのラグジュアリー。まだまだお二人ならではの深みのある対談は続きますので、後編もご期待ください。

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ESTNATION Men's Director

NAOKI WASHIZU

Planner

AKIRA TANEICHI

Photographer

YUMA YOSHITSUGU

Writer

KEI MATSUO (TEENY RANCH)

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