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ラグジュアリーの本質を追及し、 品質にこだわったものづくりによるタイムレスでクリーンなスタイルを提案する ESTNATION。ただ、そのラグジュアリーの定義とはいったいなんなのか。「豪華な」、「贅沢な」という意味だけで表現することが果たして本質なのか。フリープランナーの種市暁さんを水先案内人とし、それぞれが思い描くラグジュアリーを探す旅に出ます。

ARCHIVE

ISSUE 1 鷲頭 直樹
ISSUE 2 靍岡秀明
ISSUE 3 佐々木明
ISSUE 4 佐藤大介
ISSUE 5 前編 近藤 昌
ISSUE 5 後編 近藤 昌
LUXURY OF ESTNATION

Issue 6

藤井かんな

心を動かす
モノやコトに触れる

「LUXURY OF ESTNATION」は、さまざまな分野で活躍する人々が今のラグジュアリーについて、種市さんと語り合う連載企画。ここまで男性が続きましたが、初の女性ゲストとしてESTNATIONのウィメンズディレクター、藤井かんなが登場します。女性目線によるラグジュアリーの話や影響を受けたもの、ウィメンズディビジョンが提案していきたいことなど、幅広い対談内容となっていますので、ぜひ最後までお楽しみください。

PROFILE

藤井かんな

セレクトショップのプレスやバイヤーを経て、ESTNATIONのウィメンズディレクターに就任。ウィメンズ商品の企画や買付け、店頭表現のディレクション、新規プロジェクトなど、多くに携わる。プライベートでは美術館巡りや伝統工芸品の収集なども楽しむ。

LUXURY OF ESTNATION ISSUE 6

INTERVIEW

ファッションは
いろいろなカルチャーと繋がれる
柔軟性を持っている

前回の近藤さんで第1章が終えということで、新シーズンのスタート。引き続き、ラグジュアリーについてお話をしていただけたらと思います。

種市

初の女性ゲストですが、改めてよろしくお願いします。メンズディレクターの鷲頭くんとの対談でスタートしたLUXURY OF ESTNATIONですが、藤井さんはこの連載をご存じでしたか?

藤井

もちろん拝見してました。私もESTNATIONのウィメンズディレクターとして、本質的なラグジュアリーとはどういうことなのかを考えていました。この連載に登場されていた方々も色々な目線で、リアリティのある話をされていましたね。

種市

ご自身はどのようにラグジュアリーをとらえていますか?

藤井

それで言うと、ココ・シャネルが「贅沢は模倣できないもの。」や「贅沢とは、魂のリラクゼーションである。」といった言葉も残されていて、そういった格言にも影響を受けました。心地よさは人によってそれぞれで、リラックスしている時や逆に緊張感がある状態の方がいい時もある。そういう視点で考えると、感動することが自分にとってラグジュアリーだと思っています。

種市

もう最初からバチッと決めてくれましたね(笑)。この連載って、フランクに喋りながら徐々に皆さんの考えるラグジュアリーというものを炙り出されてくれればというノリでやっていたのですが、初っ端に本質をついてくるパターン。流石です。

藤井

大丈夫ですか?(笑)。私もラグジュアリーについてすごく考えていたから、どんなことが大事なのかなと。

種市

ESTNATIONと今こうやって、色々関わりを持たせていただくようになって、ファッションに対してのラグジュアリーを本当に体現していると思うんです。ただ、逆に言えば、ESTNATIONはカルチャー要素を、見せきれてないと感じていました。だから、違うアプローチとして、色々なジャンルの人に話を聞いてみたいということで、この連載が始まりました。

藤井

そうですね。私もESTNATIONに携わってもうすぐ8年経つんですが、ファッションはいろいろなカルチャーと繋がれる柔軟性を持っていると思います。私も映画や音楽、写真、アート、建物を見るのが本当に好きなのですが、おっしゃるようにESTNATIONには奥行きを感じることや心にジワっと伝わることが足りてないなと自分も感じていました。少しでも、そういうことをスタッフが知るきっかけを作っていかなくてはいけないし、お客様にモノやスタイルを提案する際にも重要だなと思います。

種市

もっとモノの背景みたいなのを見せていっても面白いんじゃないかと思いますね。

藤井

ショップスタッフやプレスチームと、六本木ヒルズ店のディスプレイを月に1回ぐらい変更してるんですが、その方向性を決める際に何かの本や映画がアイデアになることが多くあります。そういうことで、何かのムードが生まれたり、楽しいって思ったり、疑問を持ってもらったり、奥行きやストーリーに繋がったりすることがあると思います。

種市

なるほど。

藤井

単純に楽しいんですよね。例えば、1枚の白いシャツも見せ方によって、いかようにも伝えられる。実際の仕事にも、そういうカルチャーの蓄えが生きてくるんだなって思います。

作品の色使いなどが、
ディスプレイやVMDの
引き出しに

種市

話は変わるんですが、先日友人がテイラー・スウィフトのライブに誘ってくれたんです。ただ、初めは名前はわかるけど、曲もそんなに知らないからいいよと遠慮していた。ただ、いざ行ってみるとパフォーマンスのパワーに圧倒された。それから彼女のことが気になって、ドキュメンタリー作品も見たんですが、少女が大人になっていき、政治的な発言をするようになっててどんどん強くなっていく。

藤井

昨今の女性はタフなイメージが確かにあるのかもしれませんね。

種市

昔は痩せて綺麗な服だけ来てお人形さんみたいなのがかっこいいと思っていたけど、そこから変わって別に多少太ってようがじゃないですが、今は自然体でいる。そういったことも、彼女が体現している豊かさであり、ラグジュアリーに通じる部分ってあるのかなって思いました。

藤井

そういう予期せぬ出会いってありますよね。私も影響を受けた人が女性に多いんですが、生き方とか、その人の内面が作品に現れるように感じます。その中でも篠田桃紅さんという書道と絵が融合したような作家さんがいまして、作品も内面が滲み出るような感じで目に止まりました。篠田さんのお父さまの出生地である岐阜を心のふるさとと語っていて、彼女の仕事の源流も美しく、濃い。まさに美濃という地名の捉え方にも感銘を受けました。

種市

そういう地名も改めて調べると面白いですよね。僕も最近、 岐阜の飛騨高山に泊まったりしながら、雪山に行っています。白川郷などの歴史的な建物があるのでインバウンドが多いんですけど、 冬場は意外と混んでないから快適に過ごすことができるんですよ。改めて、岐阜は美しいところだなと感じました。

藤井

素敵な場所ですよね。続いてこちらは男性なんですが、中川幸夫さんという華道家。花を生けるガラスの器も自分で作っていて、作品の写真も自分で撮影しているんです。実際の作品はそのガラスの器しか見たことないんですが、作品集の写真を見るだけで圧倒されます。

種市

80年代にこんな作品を残されていた方がいたんですね。

藤井

中川さんが93歳、篠田さんも107歳と長寿で、経験の重みというかパワーを感じます。そうやって元気に創作活動するってことも豊かなことですよね。私にとってはいろんなモノに触れることが重要なので色々な場所に足を運ぶのですが、篠田桃紅さんの作品は岐阜に記念館もあり、東京でも虎ノ門にある菊池寛実記念智美術館で常設されているので見に行きました。

種市

実際そういった作品に触れて、仕事に影響することもありますか?

藤井

ESTNATIONでは日本文化をダイレクトに伝えるというのはまだ少ないんですが、色使いなどはディレクションやディスプレイを考える時の引き出しになっていると思います。

歴史を理解してこそ
ラグジュアリーという
意味がわかる

お話を戻しますが、ラグジュアリーのジャンルでいうとウィメンズのシーンは変わってきていますか?

藤井

分かりやすい感じだとThe Rowのような素材や仕立てが上質でタイムレスなブランドは間違いなく影響力がある。あと、女性が自分をありのままに表現したいという気持ちがすごく強くなってきていると思います。日本のFETICOというブランドは露出度が高くても人気がありますし、肌を見せる感覚も変わってきたように感じます。かと思えば、メンズっぽいアイテムをあえて女性が着るみたいなスタイルとかもあるし、ジャンルも幅広くなっているなと思います。

種市

お客様の求めるモノも変わってきていると?

藤井

そうですね。ESTNATIONのお客様も自分の内面が出るような表現をしたり、女性らしさの定義が変わってきてるのかなって感じます。逆に種市さんが変わってきたと感じることはありますか?

種市

それでいうと自分たちが若かった時代とは明らかに違うじゃないですか。昔はモテたいって意味での露出や色気があっていいよねみたいなことがあった。それが、今のモノって自分が着たいから、その格好をするって感じで、肌も出したいから出してるだけ。誰に媚びてるとか迎合してるわけでもない。

藤井

そうですね。例えば、エクゼクティブな方のジャケット1つ取っても、何かそこにちょっとした自分の主張が少し入るみたいな変化を感じます。

ご自身はESTNATIONに入る前と入った後でラグジュアリーの捉え方って違いますか?

藤井

正直に言うと前職までは使いづらい言葉というイメージがありました。若い時って特に背伸びをしたかったり、大人になりたいみたいなのが強く、私自身もそうだったし、そういう意味での背伸びみたいなことは買い物でもしていました。ただ、それがラグジュアリーなのかを、ESTNATIONに入ってからは考えるようになった。

種市

年齢の遍歴によって、変わってきてる部分と軸として変わってない部分はありますよね。例えば、メゾンブランド1つ1つに歴史と変革があるから今も残っている。そういったブランドは愛される理由があるし、僕自身も愛用しているものもある。そこにThe Rowのようなブランドが今はあったり、いろいろなスタイルが楽しめるなと思います。

藤井

少し前にクリスチャン・ディオール展をやってたじゃないですか。実際に足を運んだんですが、受け継がれた技術や、関わっている人たちの歴史を見ると価値が改めて伝わる。それを理解してこそ、メゾンブランドがラグジュアリーという意味がわかるなって思います。

種市

ラグジュアリーという言葉は簡単かもしれませんが、理解するのは難しい部分もありますよね。そういう奥行きじゃないですが、僕自身も知的好奇心をなくさないようにしたいなと思ってます。

ESTNATIONが提案する
ラグジュアリーは
まだまだ可能性を秘めている

藤井

そういう意味で言うと、歴史と背景があるブランドの反対側にインディペンデントな次世代ブランドが並ぶみたいなことにトライしたいと思っています。真逆のように見えるけど、それがフラットに並んでいて、どちらも本質的には贅沢という提案はESTNATIONだからできるかなと。

種市

ESTNATIONってラグジュアリーという意味では、セレクトショップの中でトップにいるわけじゃないですか。バランスは大事ですが、そこにいい意味のノイズを加えていくのは見てみたい。もっと匂いがするような感じですよね。今はいい意味で無味無臭というのを僕はちょっと思います。

藤井

おっしゃるように無味無臭や、艶っぽい感じが一般的に思われているイメージかもしれません。

種市

去年行った鶴仙園のイベントは僕も少しだけお手伝いさせていただいたんですが、ESTNATIONらしさもありながら、違った匂いも出ていて面白かったなと思います。ウィメンズの方でも先ほど藤井さんが紹介してくれたアーティストの作品など、何か少しパーソナルのモノがあっても面白そうですね。

藤井

実はセレクトにおいて、何かいい意味で違和感になるようなクラフトなモノとかも、ちょっとずつトライもしてるんです。

種市

ウィメンズのフロアは緊張するのでちゃんとお邪魔できてないんです。なので、あんまり突っ込みづらいんですけど、そういった匂いとか雰囲気があったら僕も入りやすくなると思います(笑)。

藤井

今度ぜひご案内させてください。洋服でもカジュアルの提案とかもまだまだやりきれてないし、ウェルネスも気になっているんです。 自分も全くスポーツというか体を動かしたりとかしてきてなかったんですが、1年半ぐらい前からピラティスを始めたんです。

種市

今みんないいって言いますね。僕の周りでもやってますよ。

藤井

ピラティスって自分の体と向き合う時間になるので、循環がよくなってニュートラルになるんですよ。

種市

姿勢もよくなり、健康上すごくいいんですよね。

藤井

軸がしっかりするんですよ。だから単純に立っててもフラフラしない。

種市

ESTNATIONでピラティスの提案を行うのもかっこいいですよね。

藤井

お客様もやっている方が多いと伺っています。

種市

ファッションとのミックスはESTNATIONならではになりそう。

藤井

今はやれてないんですが、奥行きを出してくみたいなことは色々ある。ESTNATIONが提案するラグジュアリーはまだまだ可能性を秘めていると思うので、いろいろとトライしていきたいです。

Column

ここでは自身が思う“今”のラグジュアリーにまつわるものを紹介してもらいます。果たして、そのものにはどういった思い入れがあり、どのようにラグジュアリーを表現するのか。そんな逸品たちをお楽しみください。

瀬戸焼き

京都の骨董市で購入した陶器です。昭和の初めぐらいと説明を受けたんですが、金継ぎもされているので古いモノだと思います。作家さんの陶器も集めているのですが、こういうぱっと見で気に入ったモノも買います。その時は気づかなかったけど、実はこんな歴史があるんだっていう後々の発見も面白い。今後もこういった出会いは手にとっていくんだろうし、ESTNATIONの提案でも交えていけたらと思ってます。

篠田桃紅の作品集

書道だけでなく、水墨による抽象表現という独自の境地を開拓した篠田桃紅さんの作品集。これまでさまざまなアーティストを見てきましたが、篠田さんの作品にはとても感動したのを覚えています。その心が動く瞬間が贅沢だなと思いますし、昭和の早い頃に篠田さんが単身でニューヨークに行き個展を開くなど、女性ならではのタフなエピソードにも惹かれました。もう亡くなられてはいるんですが、エッセイなども残されているので読みたいと思っています。

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ISSUE 1 鷲頭 直樹
ISSUE 2 靍岡秀明
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ISSUE 5 後編 近藤 昌
ESTNATION Men's Director

NAOKI WASHIZU

Planner

AKIRA TANEICHI

Photographer

YUMA YOSHITSUGU

Writer

KEI MATSUO (TEENY RANCH)

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