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ラグジュアリーの本質を追及し、 品質にこだわったものづくりによるタイムレスでクリーンなスタイルを提案する ESTNATION。ただ、そのラグジュアリーの定義とはいったいなんなのか。「豪華な」、「贅沢な」という意味だけで表現することが果たして本質なのか。フリープランナーの種市暁さんを水先案内人とし、それぞれが思い描くラグジュアリーを探す旅に出ます。

ARCHIVE

ISSUE 1 鷲頭 直樹
ISSUE 2 靍岡秀明
ISSUE 3 佐々木明
ISSUE 4 佐藤大介
ISSUE 5 前編 近藤 昌
ISSUE 5 後編 近藤 昌
ISSUE 6 藤井かんな
ISSUE 7 真藤舞衣子
LUXURY OF ESTNATION

Issue 8

田中シェン

ラグジュアリーは自分を喜ばせられる体験

自身が今考えるラグジュアリーについて、ジャンルレスに第一線で活躍する人々と対談を行う連載企画「LUXURY OF ESTNATION」。第8回となるゲストはモデルや俳優、イラストレーターなど多彩な分野で活躍する田中シェンさんが登場します。今回はお二人の出会いの場ともなった羽根木のオプティカルサロン「緑青」にお邪魔して、語り合ってもらいました。シェンさんならでは軽快ながらも芯をつくトークに、種市さんも思わず感心。どのようなラグジュアリーの話に花が咲いたのか、最後までお楽しみください。

PROFILE

田中シェン

鹿児島県出身。英語、中国語、日本語を操るトリリンガル。ファッションモデルとして活動しながらSHENTASTIC creative studioを立ち上げ、イラストレーターや動画クリエイターの顔も持つ。『田中のおしゃべり日記』と題したインスタグラムが人気。俳優としては、NHK大河ドラマ「いだてん~オリムピック噺~」(19年)やNetflix「First Love 初恋」(22年)などに出演。2024年8月31日から代官山蔦屋にて初のPOP UPを開催予定。

LUXURY OF ESTNATION ISSUE 7

INTERVIEW

絵を描くのが好きだったから、
本当は漫画家になりたかった

撮影からすでに話が盛り上がっていたので、その流れで早速対談お願いします。

種市

対談が始まる前に聞いてびっくりしたんだけど、出身は鹿児島なんだよね。それで今、ご両親はニューヨークに住んでいる。

田中

そうだね。ニューヨークと福岡に拠点があって、お父さんは行ったり来たりしてる。

種市

じゃあシェンはいつ東京に来たの?

田中

東京は文化服装学院に入ろうとした時になるのかな。ニューヨークからだから、上京するという言葉が合っているのかわからないけど、そのタイミングだね。

種市

ちょっと待って(笑)。

田中

だって上京するって、日本の地方に住んでて、東京に出るみたいなことじゃん。なんかこう登っていくイメージがあるんだけど、鹿児島からだったら間違ってないと思うけど。

種市

その前に待って。鹿児島から先にニューヨークに移住してたってこと?

田中

そうそう。中高大はニューヨークの学校に通っていたの。

種市

そうだったんだ。それは知らなかった。鹿児島からニューヨークってなんか洒落てていいね。そこからなんで文化服装学院に通おうと思ったの?

田中

それは両親が頑張ってくれたおかげで、私はついて行っただけだよ。文化では学びたいと言うよりもギャルになりたかったの。

種市

え!?ニューヨークにいてギャルが面白そうだなと思ったの?

田中

親の転勤で海外移住だったから、どうしても青春が終わってないみたいな気持ちがあったの。アメリカの服飾系の大学に通っていたけど、ギャルを口実に文化服装学院に入りたいって言った。

種市

そうだったんだ。

田中

もとを辿れば絵を描くのが好きだったから、漫画家になりたかった。ただ、漫画を書くには絵だけじゃなくて、面白い話も考えてストーリーの構成も考えないといけないから厳しいなと......。それでほかに絵を描く仕事って何があるんだろうと思っていた時に、たまたま大阪から転校生が来たんだけど、その子がSUPER LOVERSとかお洒落なブランドを着てて、なんだこれはと衝撃を受けた。なんでこの子はこんなにも輝いてるんだろうと思って、服を作る仕事でも絵をかけるじゃんと気づいたの。

種市

なるほど。じゃあ小学校の原体験から、アパレルをやってみようって思ったんだ。

田中

そうそう。だから小学校ぐらいの時から思ってて、アメリカに渡っても中高にファッションの学部があったから通っていた。意外と普通でしょ(笑) 。

種市

文化を卒業した後はアパレルの企業に就職したんだよね。それから、ちょっと色々やってみたけど、自分で面白いことやってみようと思ってモデルになったってこと?

田中

そうだね。会社に属することに限界を感じていたから、辞めてどうしようってなった時に文化卒だからモデルのバイトしない?って声かけてくれる友人がいたの。そういう流れもあって、事務所にスカウトしてもらった。

種市

なるほど。モデルになった後は、映像の作品にも出演したりしてたよね。

田中

Netflixや映画とか、何個か出させてもらった。やっぱり私は表現することが好きだと思うんだよね。カテゴリーをあんまり区別してないというか、自分自身が何かクリエイションに携わったら、もうそれは表現。モデルはモデルで瞬間を切り取られる仕事だけど、映像に行ったらその前後があって、結局は通じることがあるから、面白いなと思って挑戦してみたのがここ最近の話。

自分が喜ぶ
お金の使い方をしてあげたい

種市

シェンって今の話でもそうだけど、何なんだろうなっていうところの面白さがある。想像の垣根を超えてくる感じがあるから、そういう人が思うラグジュアリーの話を聞いてみたかったんだよね。

田中

ありがとう。お話をもらってラグジュアリーのことを考えてみたんだけど、私は年を重ねるにつれて付き合う人が変わることで意識がだいぶ変わったなと思う。この羽根木という街を訪れることも私にとってはラグジュアリーかな。この緑青もだけど、やっぱりヴァイブスがあう人がいるし、そういう人たちとどんどん繋がっていく。この感覚がラグジュアリーだなと。東京に来た最初は格好よく見せたいとか、俺はできるぞみたいな感じで六本木に行ってたもんな。

種市

そうだ。その当時って乃木坂に住んでたというか、家買ったんだよね。

田中

ただ会社を辞めるのは悔しいから家を買った。

一同

驚き

種市

やっぱりクレバーだよね。パッションもあるけど、なんだかんだ地頭がいい。

田中

そんなこと全然ないよ。ただやってみようと思っただけ。だから、ラグジュアリーと聞いてお金の使い方が今の私にはピンとくるかな。なるべく自分が喜ぶお金の使い方をしてあげたいと思うから。

種市

こういうことを俺が言いたかったなぁ(笑)。 なんで最初の鷲頭くんとの対談の時に言えなかったのかな.......。

鷲頭

いやぁ、金言ですね。

田中

それは金額じゃなくて、それこそだって350円のうどんやそばであっても自分がこの時間楽しいって思って払うようにしてる。そういうお金ってどんどん回ってくるし、使うことによってもっと大きな体験ができたりする。今回もだけど、種さんと最初は誰だこの人みたいな感じで出会ったけど、気づけばこの対談にまでたどり着けた。

種市

もしかして、もうこの対談を1回やってる?(笑)。ちょっとどっかで話してきたかってぐらい仕上がってる。やっぱりプロだね。

田中

いやいや。それでいうと最初、種さんに出会った時に持ってるバッグが可愛くて、それが欲しくなってすごく探した。そういったように私が好きだなって思うモノを持ってる人や、憧れを抱くような人たちにちょっとでも近づけるように努力してる。同じフィーリングを持って体験ができるっていうことも私にとってのラグジュアリー。

種市

なるほど。

田中

あと、昔は香水を対外的に使っていたけど、最近は家の寝具や空間にかけて使うことが多い。それが家での休まる時間を快適にしたり、自分のためになると思っている。あと洋服も着心地だったり、生地の肌触りをすごく気にするようになった。でも、それは周りの大人がやっぱり素敵だったからだし、こういう人が着てるからこそ自分も着てみたいという感覚。種さんならわかるよね?

鷲頭

種市さん圧倒されてますね(笑)。

田中

私、種さんのことも真似してるじゃん。

種市

いや、真似してるというか、シェンに持ってかれてるよ(笑)。そういう幅広いアンテナというか、知的好奇心を持って、上手くを噛み砕きながらアウトプットできるからすごいよね。あと、Instagramの見せ方も面白い。動画の編集とか時代にアジャストしてるし、それを楽しんでやってるのが伝わってきて、最終仕事にも繋がっている。その辺のバランスがすごく上手。あと、何か国語喋れるんだっけ?

田中

日本語、英語、中国語かな。

種市

どこでも行けるね。

田中

うん。どこでも行けるけどシャイなんだよね(笑)。

種市

逆のパターンだ。こういうキャラクターの人が実は人見知りだったりする時あるよね。

田中

そうそう。初対面で種さんを見た時は絶対業界の偉い人だって思った。変に関わるのやめとこうみたいな(笑)。

一同

自分のチームで
世の中に、1つ花を咲かせたい。

種市

今後、シェンがどう動いていくのかは考えてんの?

田中

そうだね。イラストも描くから、そのご縁でディレクションにも携わらせてもらっていて、そっち方面のお仕事が増えてきてるんだよね。今までは1人でやることが多かったけど、チームを作っていけばもっと広い世界に届けるみたいなことができるのかなと思っている。

種市

個人ではなく、そういうチームアップすることも考えてるんだ。

田中

私自身こういう感じのキャラクターだから、私のことを知ってくれてる人はよさをわかってくれるけど、逆に日本っぽくないように捉えられることもあるんだよね。だから俳優の活動をしてても、クリエイションの部分でディスカッションしてても、そのぽくないってところを活かしていけたらと思っている。向こうから仕事来ないんだったら、こっちから作るよみたいなマインドで、自分がいいなと思った人たちと世の中に、1つ花を咲かせたい。

鷲頭

素敵ですね。

種市

ESTNATIONでも何かできたら面白そうだよね。新しい層というか、自立もしていてクリエイティブの遊び心がある。ESTNATIONはシックな要素が強いから、シェンがポップアップショップをやったり、展示したり、何かやってみたらよさそう。

田中

それはぜひ。イラストとかでもしコラボしていただけたらすごく嬉しい。あと、私は靴が好きなんですよ。メンズのファッションを真似するようになってから、あえて自分のサイズに合わない大きめの靴を履いてるの。

種市

確かにそう言われてみるとそうだね。

田中

そっちの方がメンズのダボっとした服を着た時にバランスよく見える。だから、最近絵で女の子を描いてもすごい大きな靴を履いてるっていう自分のデカ履きの特徴を生かしてじゃないけど、反映している。そんなことをやってるから靴売場でぜひ(笑)。あと、8月31日から代官山蔦屋で初のPOP UPを予定していて、12月は梅田蔦屋書店でも行う予定。

鷲頭

うちでもやってほしいですね。

種市

いろいろと出来るから1人でも割と完結しちゃえるもんね。

田中

私的にはそれが課題だったの。今までは自分でやった方が早いと思ったけど、それって広がらないし、自分が面白いって思った人がライバル的な存在になっちゃう。だから分けるんじゃなくて、その人と一緒にやることでチーム友達を作る方がいいなと。

種市

なるほどね。今っぽいところもちゃんと抑えつつね(笑)。

田中

だから、種さんの後ろをちゃんと一緒についていきながら、可愛いものを持っていたら奪っていく(笑)。

種市

こういう対談をさせてもらって改めて思ったけど、ちゃんとしてるよね。ちょっとおちゃらけつつも話がまとまってる。

生活に余白がないと
新しいモノが入ってこない

せっかくなので、先ほど撮影中に話していた生活の余白の話もお願いします。

種市

そうそう。お互いミニマリストだよねっていう話をしていたんだよね。洋服の仕事をしてるけど、あんまりモノを持ちたくない。だからちゃんと循環させるというか、売ったりあげたりとかしながら整理している。シェンもInstagramを見ていると服の量は多そうだけど、そこはちゃんとうまく循環させながらやっているの?

田中

そうだね。私は家の中もそうだけど、生活に余白がないと新しいモノが入ってこないと思うの。なんだろう.....足りない方がいいと言うか、個人的には不便な方がアイディアが生まれる。足りないから買うんじゃなくて、何で補えるだろうみたいな方が子供の気持ちになれる。そう言うマインドの方が日々の生活が楽しめますよね?

種市

僕が言語化できなかったことをキレイにまとめてくれました。

田中

だから、モノが少ない中でアイディアを想像しながら生きていくのは、意外とラグジュリーの豊かさに繋がるんじゃないかなって大人の皆さんから学んでいます。

種市

うなぎ君(緑青の店主)もよく聞いた?彼はどっちかというとたくさんモノを持ってるからね。

田中

それはそれでいいのよ。だって、人の家にお邪魔する時はモノが多い方が好きだし。

種市

確かに人んとこ行くと結構面白いものがたくさんあるし、こんなのあるんだって発見もあるね。

田中

そうそう。ただ、自分がプレゼントをもらう場合はモノじゃなくてギフト券がいいみたいな(笑)。種さんの家もソファーもなかったんだよね。

種市

去年までソファー代わりにヨガマットを並べてたね。

田中

それはソファーって言わないよ。ヨガの教室でもするの?(笑)。

種市

10枚ぐらいざーって並べたり、重ねたりしていたね。体を伸ばしたい時もすぐに伸ばせるし、なんだかんだよかったんだよ。いつどこに行くかわかんないから、そんな時にさっと出せるし。

田中

私、種さんのすごい好きなところがあって、それはいつでも海に行っちゃうこと。いろんなこと忘れてでも海に行っちゃう。

種市

そこ?

田中

私的には夏祭りの縁日を全力で楽しんでいる子供心みたいなところが、この若々しいイケオジの秘訣なんだろうなと思ってます。

種市

褒められてんのか、からかってるのかわかんないけどね(笑)。

田中

そういう生き方やっぱいいなって思う。近所の人のモノを全部自分のモノにしたりとかね(笑)。

一同

種市

それは一緒でしょ。

田中

そうなの。ここにも入り浸ってるからね(笑)。

種市

羽根木は本当にそういう意味で面白いよね。シェンが言っていたようにいい空気感というか、人が人を繋げていく。作為もなく、気持ちよく広がっていく感じはあるかも。

田中

種さんは羽根木のアイドルだもんね。

種市

アイドルはあなたでしょ。この連載にも出てくれた新代田のDaitaliaも近いし、本当に羽根木は魅力がいっぱい。シェンとも気づいたら、この緑青で知り合って、全く何の壁も作らずに気持ちよく接してくれるからこの連載への流れも自然だったように思うよ。

田中

光栄です。

鷲頭

そして、思っていた以上に名言を数々と。

種市

やっぱり頭いいよね。普段はこのハッピーな感じでやってるけど、俺たちと違って爪を隠してる。

田中

一緒でしょ。同じ人間だよ。ね、アキラ!

種市

はい。完敗です(笑)。

Column

ここでは自身が思う“今”のラグジュアリーにまつわるものを紹介してもらいます。果たして、そのものにはどういった思い入れがあり、どのようにラグジュアリーを表現するのか。そんな逸品たちをお楽しみください。

guepardの眼鏡

緑青で出会ったguepardはこれで2本目。フレームは独特な形状だし、リムが太いとキャラクターっぽく見えがちなんですが、自分の顔に合うってことがわかって愛用しています。これからも眼鏡は増やしていきたいなと思っていて、選ぶ形はもちろんのこと、自分に合うカラーとかを考えるのはメイク感覚で楽しいんですよね。あと、こういった小物を1つ1つちゃんと選ぶというお金の使い方はラグジュアリーな生活に繋がると思っています。

Special Thanks
Optic Salon 緑青

新代田駅から程近い羽根木の森と呼ばれる緑に囲まれた閑静な住宅街の中に佇む眼鏡店。 国内外から取り揃えたブランドのほか、ヴィンテージも豊富にラインナップ。オーナーの宮川さんによる丁寧な接客のもと眼鏡選びが楽しめ、調整やアフターフォローにも対応してくれる。

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ESTNATION Men's Director

NAOKI WASHIZU

Planner

AKIRA TANEICHI

Photographer

YUMA YOSHITSUGU

Writer

KEI MATSUO (TEENY RANCH)

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